残された手記 17

以下抜粋。


レイ歴266年 3月1日

 セミージャの『メディオ学院』入学が決まった。

 突然のことでついていけなかった。

 プランターおじいさんに頼んでみたらすぐに決まったという。

 セミージャが言うには、兄に劣る自分ができるのはたくさん勉強して、兄の助けになることだから学びたいのだという。

 だけど・・・突然すぎるよ。

 私に相談とかしてくれても良かったんじゃないだろうか・・・。

 ちょっともやもやして、喧嘩になってしまった。

 でも、今回はセミージャが悪い。


レイ歴266年 3月5日

 フェリスくんとサティスちゃんと一緒にお散歩をした。

 最近、流暢に話すようになったフェリスくんが外に出たい散歩をしたいというからお母さんに伝えて丘の上まで歩いて行った。

 丘の上で二人が手を繋いで一緒に歩いてる姿が微笑ましかった。

 サティスちゃん、フェリスくんに懐いているみたいでかわいかった。

 夕方は、道場終わりのセドロさんとフェリスくんを迎えに来たブリランテさんが少しだけお茶していった。

 そんな二人がどんな会話をしているのかと言うと、こどもについての事だった。

 昨日全然1人で寝てくれなかったと頭を抱えるセドロさん。

 サティスちゃんの事で悩む姿が多い気がする。

 ブリランテさんはブリランテさんで、そんなセドロさんの頭を撫でて慰めながら、フェリスくんのことで悩みが一切ないのが悩みみたいなことを呟いてた。

 いつもあんなに笑顔が素敵な二人のその姿に驚いた。

 お母さんって大変だなぁ・・・。


レイ歴266年 3月7日

 明日はとうとうセミージャが『獣王国』に行ってしまう。

 あの日から準備で忙しかったのか、それとも私の事を嫌いになったのか、一度もセミージャに会えていない。

 本当は分かってる。

 悪いのは私だ。

 離れちゃうのが寂しくて素直に応援できなかったのが悪いのだ。

 明日。

 ちゃんと謝ろう。


レイ歴266年 3月8日

 セミージャが『メディオ学院』に行ってしまった。

 最後、ちゃんと謝れて良かった。

 セミージャも謝ることないのに謝ってくれた。

 ちゃんと仲直りができて本当に良かった。

 毎年の夏にある長期休暇には一度帰ってくるらしい。

 これもブリランテさんのおかげだ。

 ブリランテさんには感謝してもしきれないな。


レイ歴266年 3月15日

 ブリランテさんが帰ってきた。

 ここから『メディオ学院』まで、大体1年と少しがかかってしまうはずなんだけど・・・。

 さすがブリランテさんだ・・・。

 しかも予定ではもっと早くつくはずだったらしい。

 ちょっと怖いよ。


レイ歴266年 5月9日

 フェリスくんが突然サティスちゃんと一緒に駆け出して、森に入ろうとした!

 一生懸命走ったのに全然追い付けなくて驚いた。

 ブリランテさんがいなかったらどうなっていたことか・・・。

 大事無くて良かった。


レイ歴266年 5月10日

 昨日の今日で、フェリスくんが木の皮が欲しいと言い出した。

 昨日の行動の訳を教えてくれたのだ。

 どうするのか聞いたら良く分からないものを作ると言い出したからちょっと困った。

 でも、フェリスくんが珍しくやりたいと言っていたから頑張って協力した。

 木の皮をあげるととっても嬉しそうにしていて可愛かった。

 どうするのか見守ってみると、木の皮で紙を作ったから驚いた!

 これにはブリランテさんもビックリしていて、なにやら考え込んでしまっていた。


レイ歴266年 6月16日

 日中、私をサティスちゃんが飛び越えた。

 さすがセドロさんの娘さんだ。

 運動神経が良いとは思っていたけれどここまでとは・・・。

 二人とも体力が有り余っているのかずっと動いてるし。

 その体力を分けてほしい。


レイ歴266年 6月17日

 終戦の知らせが届いた。

 正しくは冷戦状態に戻るだけらしいけれど、お父さんが読んでる『王国新聞』に書いてあった。

 木で出来てるからちょっと重くて読む気が起きないから読んでなかったけど、今回ばかりは読んだ。

 『英雄 四天王を討つ』。

 の一面。

 『勇者伝説』を読んだことがある人ならみんな知ってる『魔族』の『四天王』と呼ばれる人たち。

 とっても強くて死なない。

 討つとは書いてるけれど、よくよく読んでみると『四天王』の1人を再起まで時間のかかる深手を負わせただけらしいけど、それでも『魔族』が後退したことには変わりない。

 まさしく『英雄』だ!

 しかもその英雄の名前は、ブリランテさんのお兄さんと、フェリス・ジュニアさん、そしてサティスちゃんのお父さんだ!

 すごい!

 早く会いたいな!


レイ暦266年 6月18日

 今日は悲しい一日だっ(涙の痕)

 二人は生きて帰ってこれなかった。

 村総出で(涙の痕)英雄を誇った。

 これ以上は書く気になれない。

 フェリス・ジュニアさん。好き(涙の痕)たなぁ。


レイ歴266年 6月19日

 今日は英雄のお葬式だった。


レイ歴266年 6月20日

 何も書く気が起きない。


レイ歴266年 6月21日



レイ暦266年 7月1日

 あんなことがあったのに、ブリランテさんとセドロさんは二人で笑っていた。

 疲れた表情ではあったが、それでも笑っていた。

 二人で支え合って、一生懸命笑っていた。

 多分、二人の子どもに気を使わせない為だろう。

 お母さんは強いな。

 ・・・私は一体何してるんだろう。

 一番つらいのはブリランテさんとセドロさんだ。

 恥ずかしい。

 明日から、また頑張ろう。

 まずは沢山休んで迷惑をかけてしまったお母さん達に謝らないと!

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