奴隷少女の夢

夢と檻

 また、同じ夢を見た。

 朝起きて着替え、顔を洗い歯磨きをして、朝ごはんを食べ家を出る。時計を見て焦り、小走りになってバス停へ向かう。天気を確認して前を向くと、ちょうどバスが来るところだった。バスに乗ろうとしてパスケースを出すと、自分の手が見えた。

 いや、見えてしまった。自分の手は青白く不健康で、アザやキズだらけだ。そんな手を見ると、嫌でもこれが夢だと分かってしまう。バスはぼやけ、代わりに薄汚い天井が見える。私はこの部屋で、奴隷Melとしてゴミ同然の扱いを受けている。

 体を起こすと、見えるものといえば変わり映えのしない鉄格子だけ。横を見ると、隣の部屋の子はもう目覚めている。Sweと呼ばれるこの子は私よりも少しだけ後にこの鉄格子の部屋に来た。最初こそ夜が来るたびに泣き叫んで、商人に蹴られていたが、今では諦めたのか大人しくしている。本当は奴隷同士で会話することは禁じられているのだが、私たちは商人の目を盗んで将来の話をする。本当にやりたい仕事やまだ見たこともない景色のこと。私たちは、同年代の子達が過ごしているであろう当たり前の日常を夢見ている。今日見た夢の話を聞かせると、Sweはこう言った。

「その夢が、現実になればいいのにね」

私も同じ気持ちだった。



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