累々と

@crapaud

累々と

黄砂降る街にヴィレッジヴァンガード 

抱き合うて胎探り合う花ミモザ 

露天湯に春の星座を溺らしむ 

紫雲英草ベトナム兵の手帳還る 

こんなにもやさしい殺し春日傘 

谷根千のマジソンダンス薄暑光 

ゆらゆらと境界ゆがむ梅酒かな 

はぬけどり薬指から痺れゆく 

夏闇の中頸椎を探りたり 

蛍には言ってしまへることもある 

指切りの落とした指に蝿生る 

ごきかぶり惑ふ荻窪南口  

モルカーの死屍累々と秋の浜 

温泉櫓いくつも過ぎて葛の花 

めがるかや少し綻ぶ網タイツ 

頸(のどくび)に黒子膨らむ小六月 

十月は赤いと誰が言ひけるや 

鳴く鹿の白眼充血してゐたり 

冬薔薇と十二の譜面交互に見 

水仙やリキシャの席に残さるる 

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