第3話 難民避難所

異世界歴

まだ不明


午前中


僕が魔王覇気を出した。

武装した10数人の魔族たちが一瞬怯んだ。

案内した3人の幼児が覇気の影響で失神していた。


「争う気がない。」


僕はゆっくりと言った。


「こちらも、争う気がない。子どもたちの心配をしただけ。」


華奢な一本角の雌オーガーが剣を鞘に納めながら、僕に返答した。

幼児たちの親と思われる魔物たちが気絶している子どもたちを持ち上げ、

避難所のテントへ連れて行った。


「僕はマーシャリ、女神、パメラ様の力によりこの世界に転生しました。」


「私はミラ、ハーフオーガのミラです。あなたは魔人に見える。」


「転生して間もないのでどんな種族に転生したのか、わからない。」


「魔王覇気を出せる種族がなかなかいない。」


「そうか。」


「私の場合、父は超(ハイパ)人間(ヒューマン)で母がオーガでした。」


「超(ハイパー)人間(ヒューマン)?」


「稀に人間の中に誕生する上位種です。幼少期に殺されるか、戦闘奴隷にされるかのは運命です。」


「過酷な運命ですね。」


「はい、5年前、大(グランド)粛清(パージ)に両親が殺されました。」


「大(グランド)粛清(パージ)?」


「人間の神、エリアス、人間以外の人型生き物の全滅を宣言した。」


ミラの周りに立っていた魔族、魔物たちが怒りと悲しみを入り混じった表情になった。


「マーシャリ様、お願いがあります。」


突然頭の中でキュリーの声が響いた。


「どうした、キュリー?」


「別行動をする許可をいただきたい。」


「別行動?」


「はい。マーシャリ様に強化分身の術が女神様より付与されている。」


「強化分身の術?」


「はい、一体を私にお貸しください。私がその一体に移ります。」


「そんなことできるのか?君は僕の能力(スキル)だろう?」


「はい、マーシャリ様と意識が繋がっているため、念話で話ができる、分身の目で私の見ているものをマーシャリ様が見ることができる。私はマーシャリ様の能力(スキル)だが、女神様の計らいにより、あなたへの絶対的忠誠心と独自意識を持っています。」


「わかった、許可する。キュリー、分身はどうやる?」


「右手を前に出して、分身出でよ、と唱えてください。外見はマーシャリ様にそっくりかあなた様が望む姿になる。それができたら、私はその分身体へ移る、マーシャリ様が前にいた世界ですと、私がその分身体へダウンロード転送し、別行動ができるようなる。」


僕は考えた。前の世界で大好きだったアイドルを思い出した。セラー戦士のミュージカルで有名になり、バラエティー番組でダンスコンクールに出たり、舞台にでる予定だったが、前の世界で一年ほど前から病気を理由に休養していた。

彼女を思い浮かんだ。


「分身出でよ。」


右手から紫色の霧が出て、僕の目の前で女性の形になった。

僕が舞台で見た、セラー戦士の恰好をしていた。流石にまずいと思い、ジーパン、スニーカーと

動きやすいシャツに変えた。

強化分身が好きだったアイドルそっくりだった、赤い目と髪、額に生えていた白い一本角以外。


「能力(スキル)転送します。」


僕の頭の中でキュリーが告げた。


虚ろだった強化分身の目に生気が宿った。


「転送完了、マーシャリ様。」


キュリーが新し体で声に出して、僕に告げた。

心地よい笑顔だった。

そしてすぐに僕の前に跪き、頭を下げた。


「どうする、キュリー?」


「この避難所を回ります、回復魔法や治癒魔法が必要な者がたくさんいますので、施す許可を。」


「好きにするがいい。治療が必要な者を癒してください。」


「ありがとうございます、マーシャリ様、わが主。」


キュリーと僕のやり取りを信じられないような目でミラたちが見ていた。


「あなた様は何者ですか?魔王覇気といい、今の術といい。本当に魔王でしょうか?」


尊敬と畏怖を込めた声でミラが聞いてきた。


「女神の力で転生し、この世界で魔王になる使命を承った者です。」


僕はゆっくり答えた。


ミラを含む魔族と魔物、全員、一気に跪き、頭を下げた。


「我ら一同、あなた様の配下に加えてくださいませ。」


避難所に数百体の魔族と魔物、ハーフブラッド、超(ハイパー)人間(ヒューマン)、そして普通の人間、おそらく魔族や魔物を伴侶としている者たちだった。

全員前に跪き、頭を下げていた。


「わかった。今から君たち全員が僕の配下。」


歓喜の叫びがさく裂した。



1時間ほど前に遡り。

この世界の人間歴

グランド・エリアス歴5年6月21日 初夏

森から北西200キロメートル、カンク公国首都サウル市。


「今の凄まじい気配は何だ?答えたくれ、インムンよ。」


「わかりません、ジュンキチ様。」


「正確な位置、わかるか?」


「場所は南にあるタラーナの森の中央付近、我ら人間の神の敵が多く潜んでいる場所。」


「では神の敵を滅ぼしに行くか。」


「はい、わが国の殲滅部隊をすぐに集めます。」


「そうしろ。嫌な予感がする、インムンよ。」


彼は勇者、シマ・ジュンキチ、日本名、島 純吉。5年前、エリアスの力により

この世界に転生した日本人の元サラリーマン。当時の年齢が25歳、見た目が転生当時のままだった。

彼が即死の勇者、彼に出会った敵、人間、魔族、魔物、魔獣であっても、滅ぼされていた。


次回:家臣なる者たち

日本語未修正。

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