夢で見た物語!
崔 梨遙(再)
1話完結:1300字
「藤堂君、大人になったら結婚しようね!」
「うん、しようね!」
あの約束をしたのは、小学生の時。相手は奈緒子、小学校と中学校が一緒だった。だが、中学に入るとほとんど話をすることは無くなった。男子がみんな、女子を意識するようになったからだ。そして違う高校に進学して全く会わなくなった。
大学を卒業して就職してから、転勤や転職で地元を何年も離れた。“もう地元には戻れないのかな?”と思っていたが、30歳くらいになって、ようやく僕は生まれ育った地元の街に帰ってきた。
僕は肩こりと腰痛に悩まされていた。ということで、時々マッサージに行った。勿論、Hなマッサージではない。指圧だ。だが、その店には指圧の上手いスタッフと、そうではないスタッフがいた。僕は、麻倉さんという女性スタッフを指名するようになった。麻倉さんは美人だが、顔で選んだのではない。指圧が上手いから指名したのだ。その点は、僕も真面目だった。目的は指圧なのだから。
僕は、麻倉さんの顔に見覚えがあるような気がした。最初に思い出したのは奈緒子だったが、奈緒子ではない。面影はあるが、顔の造りが少し違う。ちょっと奈緒子に似ているだけの女性だろう。考えても仕方が無い、僕は深く考えなかった。
指名していると、少しずつ親しくなる。指圧中に会話もする。
「藤堂さんは独身なんですか?」
「うん、独身やで。麻倉さんは?」
「私は夫がいます。あと、男の子も」
「へー! 幸せそうな家庭でええなぁ」
「あんまり幸せではないんですけど」
「え! そうなん?」
「夫が働いてくれないんですよ」
「それは大変やなぁ」
だが、また僕は長期出張で地元を離れた。地元の街に戻れたのは1年後だった。
「藤堂さん、お久しぶりですね」
「うん、長期出張からやっと戻ってきたわ。はい、これ」
「何ですか? これは」
「長期出張のお土産」
「あ、すみません。ありがとうございます」
「麻倉さん、何か変わったことは無い?」
「変わったことはあります。夫と別れたんです」
「え! それは大変やな」
「今は息子と2人で暮らしています」
「大変やんか」
その時、僕はじっくり麻倉さんを見つめた。やはり面影がある。
「まさかと思うけど、奈緒子とちゃうよな?」
「……」
麻倉さんが俯いた。どうしたのかな? と思ったら、麻倉さんは泣いていた。
「どないしたん?」
「やっと思い出してくれたんや……」
「まさか! 本当に奈緒子か? 面影はあるけど、なんか違うような気が……」
「私、目とか整形したから」
「そうやったんや、どおりで少し違うわけや。気付くのが遅くてごめんな」
「うん、私はスグに藤堂君やと気付いてたけど、私、結婚してたし、整形したし、息子もいるし、なかなか自分のことを話せなくて」
「なあ、あの時の約束、おぼえてる?」
「結婚の約束?」
「うん、あの約束はまだ有効かなぁ?」
「うん、私はええけど、私には子供がいるけどええの?」
「息子さんに好かれるように努力するわ」
「藤堂君がええんやったら、ええよ」
「ほな、結婚してください」
「はい」
6月24日、こんな夢を見ました。
夢で見た物語! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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