さかしま

遠久野千紘

さかしま

終焉にドーナツの穴朧めく


純白に秘めし暗部や猫柳


佐保姫やぬかるみ深き帰り道


亀鳴くやガードレールの無い水路


躁鬱の少年夜じゅう春田打つ


療養もキスも卯の花腐しかな


サルビアの茎あかあかとやがて死ぬ


楽園が宿るモローのサンドレス


少女の吐息や優曇華怯えけり


朴訥な鎖骨は失せて夏果てぬ


家具すべてまるみをおびよ秋茜


蓮の実や見つめ合いつつ抉りけり


竜田姫先から赤くなりにけり


聖体の秘蹟や鮭は斃死せり


吐瀉物を受ける重さよそぞろ寒


冬の鵙日々の糧にも芸術を


枯蔓を払いのけては愛し合う


累々と肋骨のごと冬の雲


山眠る語りえぬゆえ沈黙す


開闢にボードレールの波の花





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さかしま 遠久野千紘 @Chihiro_Tokuno

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