メアリー・スーは透き通りゆく

ふみづき透明

メアリー・スーは透き通りゆく

愛だけを詰め込んでくと嘘をつきオオカミの腹に石だけ詰める


否定語で定義されてく子供たち輪郭線を探して惑う


ああ、人の話を聞かないあの子だねかわいそうだね親そっくりだ


君でなく恋が欲しいと恋をしてからっぽなままのメアリー・スーは


親に似て嫌われ者の子は親に「似ても似つかぬ」、なんて言われる


理由なく乱発される否定だけ 抱きしめるものはそれしかないわ


遠浅の星の海、無を蹴飛ばしてどこにもいけない少女がおどる


ダンスなら下手ではないの上手だという設定もないのだけれど


母に愛されて誰にも愛されずメアリー・スーは透き通りゆく


遠浅の海蹴飛ばして踊る子の遠浅の海は果てまで続く


友達はもらえなかったのよママは「光あれ」って言うのやめたの


母はそうわたしのことを愛してたわたしがお腹に宿る前まで


行き詰まり死体のように投げ出されメアリー・スーの時計は止まる


要らない子たちを連ねて当社ではSDGsを推進します


良い子だとかつて呼ばれた女の子養豚場で処刑日を待つ


いつか母はわたしのことを忘れます初恋のキスを忘れたように


親権を取り上げざるを得なかった事例を悔やむ流星の夜


フィクションの子なのだからと遺棄されてドールの墓場は透明ないろ


わたしだけの中にいた子を愛せずにメアリー・スーの葬列は午後


墓碑銘に刻む名もなく花束を児相職員だけが手向ける

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