第56話 村の家作り

「えっ……アデルさん。もしかして、家具とか弓矢を作る職人さんだったんですか?」

「いや、違うけど?」

「素人さんなのに、その上手さ……ちょっと自信を無くしそうです」


 キースさんとユスティーナさんが帰った後、早速コートニーさんと共にタチアナの家を作り始めた。

 けど、家の作り方を教えてくれているコートニーさんが早くも泣きだしそうになっている。

 というのも、タチアナたちが宿に泊まっている為、キースさんたちが昨晩泊まる場所が無いという事に気付いたのか、タチアナたちが自ら宿を出て、俺の馬車で就寝してしまった。

 流石にこれはダメだ……という事で、一刻も早く家を建てなければと、朝の水浴び中に建築関連のスキルを作ってみた。


「≪スキル合成≫使用。器用さUP(弱):針とノコギリ演奏」


――『器用さUP(弱):ノコギリ』スキルを入手。ノコギリを使用している時、器用さが微増――


「≪スキル合成≫使用。器用さUP(弱):扇とスロー・ハンマー」


――『器用さUP(弱):ハンマー』スキルを入手。ハンマーを使用している時、器用さが微増――


 ノコギリとハンマー……この二つの扱いが上手いだけでも、かなりの早く建てられるのではないかと思う。

 でも魔が差したというか、この二つを合成したらどうなるのだろうかと思ってしまった訳で、


「≪スキル合成≫使用。器用さUP(弱):ノコギリと器用さUP(弱):ハンマー」


――『器用さUP:大工道具』スキルを入手。大工道具を上手に使用出来る――


 同系統のスキルを合成したからか、「(弱)」というのが消え、更に大工道具全般を上手に扱えるようになってしまった。

 この状態で家造りがスタートしたので、経験者のコートニーが悲しんでいるという状態だったりする。


「いや。でも、俺は道具が器用に使えているのかもしれないけど、コートニーが教えてくれなければ何をして良いかも分からないんだ。だから、どうか指導して欲しい」

「あ、大丈夫ですよ。私の経験があっという間に抜かれてしまった気がしますが、あくまで本職は商人ですし。という訳で、どんどん進めていきましょう!」


 という訳で、コートニー指導の下、再び作業が再開される。

 ちなみに、日本だと最初に基礎工事というか、家の基礎を作るイメージがあったけど、アポクエの世界でコンクリートなどが無いからなのか、そういう工程はない。

 なので、せめて……と、俺のふわったした知識で、家を建てる場所の土をスキルで固め、綺麗な水平にしておいた。

 そういえば、よく神主さんが家を建てる前に、地面をお祓い? していたりするけど、一応オリヴィアに聞いてみたものの、物凄く不思議そうな顔をされ……うん。アポクエの職業としては僧侶だけど、格好的にはクレリックだもんね。

 とりあえず、無かった事にして、家作りに戻る。


「アデルさん。私が作った見本がここにありますので、木材と木材をこんな感じに組み合わせてください」

「……こうかな?」

「…………えぇ、そうです。私が作った見本より上手ですけどね」


 いやあの、一つの作業毎に落ち込まないで欲しいんだが。

 そんな事を思いつつも、二人で作業を進め、柱を立てたり、壁や屋根を取りつけたりする時は獣人族の力を借りる事が出来たので、夕方には出来上がってしまった。


「す、凄い……こんなにも早く出来るなんて」

「あ、少しだけ待って。防水効果も兼ねた、塗料を塗るから」


 という訳で、元の家よりも少し広く、かつ綺麗で新しくなってタチアナたちの家が完成した。


「領主様、コートニーさん。ありがとうございます」

「おにーちゃんも、おねーちゃんも、ありがとー!」

「ブレアたちに代わって、礼を申し上げます。ご迷惑をお掛けしてしまった住人の方に、新たな家を……ありがとうございます」


 タチアナやオリヴィアから礼を言われ、ひとまず今日は作業を終了した。

 翌日にはコートニーさんのお店を作り、その次の日ははお店の倉庫を作り、ひとまず必要な建物を全て作った……と思ったところで、クレアからツッコミが入る。


「あの、アデル様。私たちの家がないので、いつまでもシモンさんとソフィちゃんの家をお借りする事になってしまいますが」

「……あ、忘れてたぁぁぁっ!」


 という訳で、領主らしく来客などにも対応出来るような家を……と、クレアが是非とも意見を述べさせて欲しいと混ざってきた。

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