第34話 既視感
「領主様ー! 誰か来るよー!」
デジャヴだろうか。
先日キースさんたちが持ってきてくれたリンゴの種を植え、急成長魔法で俺の身長くらいの樹に育ったところで、テレーズがやってきて、二日前と同じ事を言う。
時間的にも昼過ぎだし、殆ど同じ……いや、この前よりは少し早いか。
とはいえ、少しするとブレアたちが満身創痍で堀を渡ってきた。
「あ、アデルさん。すみません。また泊めていただけないでしょうか」
「いや、構わないですけど……大丈夫ですか?」
「はい。昨日は小川を見つけたので野営したんですけど、夜に魔物が現れて殆ど寝られなかったので……」
「それは……ひとまず、この前の家へどうぞ」
馬車の荷台も宿の隣に置いたままなので、毛布だけ持ってきて、ブレアたちに使ってもらう。
というか、この装備でよく死の山を一晩過ごせたな。
壁役である戦士の防具だけでも良い物にしてあげれば、僧侶の治癒魔法を使う回数も減るだろうし、少しはマシになりそうなものだが……生憎とこの村に武器や防具の類はない。
仮にあったとしても、申し訳無いがブレアたちよりもシモンたちに回すだろうけど。
「アデル様。ブレアさんたちは大丈夫でしょうか」
「いや、大丈夫ではないと思う。取り返しのつかない怪我をする前に、一旦装備を整えた方が良いと思うんだけどね」
クレアとそんな話をしながら、再びリンゴの樹へ。
急成長魔法で実がなるまでそだてたけど……うん、酸っぱい。
この前食べたリンゴの種を植えたのに、味が全然違う。
……もう少し研究が必要みたいだ。
「この度は誠にありがとうございました。あの、ボクたちが出来るお礼がこれだけで申し訳ありませんが……行ってきます」
翌朝。前と同じ様に魔物の素材……今回は、死の山で見つけたという大きな樹の皮をくれた。
俺は知らない植物だが、高い解毒効果があるとシモンが教えてくれたので、ワイバーンの皮と同じ様に増やしておく。
ちなみに、また失敗して戻って来られても困る……いや、別に迷惑ではないのだが、殺される可能性がゼロではないと、ブレアたちが来るのは心情的にちょっと嫌なので、出来る範囲での支援……ジャガイモやサツマイモを沢山渡しておいた。
きっと食料もあまりなく、空腹も辛いだろうと思って……というか、早く依頼を達成して、もう来ないで欲しいという密かな願望を込めているのだが、
「アデル様、ご立派です。村の住人以外にも親切に……素敵です!」
「領主様、優しい!」
「流石はアデル様。人の上に立つべき人格者です」
何か変に勘違いされ、クレアやソフィア、シモンを始めとした村の人たちに褒めたたえられてしまった。
とはいえ、真実を話す訳にもいかず……というか、話したところで信じてもらえないだろうと、木の皮を増殖させていると、
「領主様ー! また大きな馬車がきたよー!」
テレーズが呼びに来てくれた。
急いで村の入口へ向かうと、キースさんとコートニーさんが降りてきた。
「アデルさん。前回は良い取引をありがとう! 今回は、食料と前回依頼された植物の種や苗に、今回はちょっと高価な品を持って来たよ」
「高価な品?」
「あぁ。折角大きな取引をさせてもらうのに、食料と植物だけだと、馬車に余裕が出来てしまうからね。商人としては、どうせなら沢山運んできて、沢山買ってもらいたいんだ」
「なるほど。じゃあ次に来る時は……武器と防具をお願いしたいかな。この辺りは魔物が強いから、より安全性を高めたいんだ」
という訳で、村にあるアポクエの序盤の武器……石の槍と木の弓矢からグレードアップさせるべく、装備品を頼んでおいた。
もちろんシモンたちに使ってもらうものだが、余裕があればブレアたちに売るなり、レンタルするなりして、早く依頼をクリアしてもらいたい。
ひとまず、前回と同じ様に倉庫にあるものを査定してもらい、持ってきてもらった食料や種などを購入する。
ちなみに、前に宿へ泊まった時に足りていなかったので……と、テーブルと椅子を持って来てくれていたので、それも購入して宿へ。
それでも資金は大幅にプラスなので、
「では、最初に言った高価な品というのを見せてもらえますか?」
「あぁ。これだ」
キースさんが持ってきたという謎の品を見せてもらう事にした。
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