第7話 空腹のソフィ

 ハルキルク村の食料事情改善の為に暫し考え……試してみようと思うスキルがある。


「少し……試したい事がある。スキルを使用するけど、危険なスキルではないから安心して欲しい」

「え? アデル様? スキルって……」


 あ、そうか。スキルが無いから追放されたのに、その俺がいきなりスキルを使うとか言い出したら、クレアが変に思うのも当然か。

 まぁクレアには後で説明するとして、それより今はソフィや村の子供たちを何とかしなければ。


「≪スキル合成≫使用! クリエイト・サンドと識別:芋!」


 砂を生み出す魔法と、お芋の種類を判定出来るスキルを組み合わせれば……


――『クリエイト・ポテト』スキルを入手。芋を生成出来ます――


 狙った通りのスキルが出来た。


「よし。二人とも、見ていてくれ……≪クリエイト・ポテト≫」

「わぁっ! アデルさんの手からポテトが出てきましたっ!」


 ジャガイモをイメージしながら使ったからか、俺の手からポロポロと拳大のジャガイモが現れる。

 今度はサツマイモをイメージしてスキルを使用すると、イメージした通りのサツマイモが現れた。

 あと、俺が知っているのは里芋と長芋に、コンニャク芋くらいしかないけど、この世界の芋について知れば、それも出せるかもしれないな。


「なっ!? こ、これは……た、食べられるのか!?」

「おそらく。これなら俺の魔力が無くならない限り生み出せると思う……が、先に食べられるか味見をしてみよう。キッチンを借りても良いか?」

「あ、あぁ。そっちだ」


 目を丸くするシモンに案内され、奥にあるキッチンへ。

 水瓶の水を使ってジャガイモを洗っていると、慌ててクレアがやってくる。


「アデル様。お料理でしたら、私が」

「じゃあ、皮をむいて焼いてみようか。俺は、馬車の荷物から、調味料を取ってくるよ」

「わ、わかりました。お任せください」


 どうやらジャガイモはクレアも知っている芋らしく、ナイフでスルスルと皮をむき始めた。

 個人的には、アルミホイルに包んでそのまま焼いて塩で食べる……でも十分なんだけどね。

 馬車へ戻り、街で補充した調味料や調理器具が入ったカバン……と、ついでに着替えの入ったカバンなど、持てる分はついでに運んでおく。

 シモンの家に戻ると、クレアがジャガイモの皮をむき終えており、串に刺して炙っていた。

 火が通ってきたら、軽く塩を振って……いただきます!


「んっ! 美味しいですっ! アデル様っ! こんなに美味しいポテトは初めて食べましたっ!」

「な、何だこのポテトは……旨いっ! 旨過ぎるっ!」


 日本のジャガイモをイメージして生み出したからか?

 クレアの知っている芋と同じではあるものの、俺がイメージしていたジャガイモの味だ。

 おそらく品種改良とかで、この世界の芋よりも遥かに味が良いのだろう。


「ひとまず、問題無く食べられそうだし、ソフィの分も作ってあげよう」

「そ、そうだな! 俺の分がまだ残っているから、先にこれを……」

「待った! ソフィは数日間、水しか飲んでいないんだよな? そんな状態でいきなり固形物を食べても胃が受け付けない。クレア、このポテトで薄めのポタージュスープを作ってくれ」


 シモンの家にある一番大きな鍋にお湯を沸かしつつ、シモンがポテトを洗い、クレアが皮をむいて、俺が適当な大きさに切っていく。

 ポテトを茹でたら、俺とシモンが気合で潰し、クレアがミルクと塩コショウを入れて味を調えていく。


「ん……何だか、美味しそうな匂いがするの」

「ソフィ! 見てくれ! このお方が……アデル様がスキルで物凄く美味しいポテトを出してくれたんだ。もうすぐスープが出来るぞ」

「ポテトのスープ!? ほ、本当に!?」

「あぁ! ほら、出来たみたいだ!」


 クレアがポタージュスープを器に注ぐと、ソフィが恐る恐る口に運ぶ。


「お……美味しいっ! お兄ちゃん! ソフィ、これなら食べられる! ……美味しいよぉ」

「ソフィが……アデル様、クレア様! 本当にありがとうございますっ!」

「シモン。じゃあ、村に居る他の子どもたちも集めてくれないか? クレア、すまないが更にスープを作るぞ」


 ソフィが涙を流しながらスープをおかわりし、シモンが家の外へ走って行く。

 俺とクレアは再び調理を始め……ひとまず、村人たちの飢餓は防ぐ事が出来たようだ。

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