第18話 話を聞く前に終了した話し合い
すると彼女は『さすがは悪役令嬢……』という気高さで、礼も言わずに「フシャー!」といった。
応接テーブルへ素早く飛び乗り、猫手で激しく叩きはじめる。
「にゃーん! にゃーん!」
彼女の手でバシ! バシバシ! とされたおもちゃはされるがまま、テーブルの上でチョ! チョチョ! と左右にずれた。
『もう死んでいます』と。
「ああ、退屈させてしまったかな」苦笑する年齢不詳なイケメン学園長の目が、悪役令嬢ちゃんと飾り付きおもちゃを追う。
「式の前に伝えておきたくてね、実は――」
本題に入ろうとした彼を、『さてはストレスレベルを顔で表現してるな』と断じたくなるほど不機嫌な顔をした、いかにも神経質そうな男が、おもちゃを滅多打ちにする悪役令嬢を見ながら遮る。
眼鏡をかけ、ネイビーに近い髪を後ろへかっちりと撫でつけた姿の、お堅い美形副学園長は、硬い声で言った。
「それでは授業を受けるのも一苦労でしょう」と。
その瞬間、男に向かってシュッ――! と虹色の何かが飛来した。
◇
バシ――! バシバシ――!
「にゃーん! にゃーん!」
どういう因果か、ストレス値の高そうな副学園長の頭に、猫の獲物的なものが引っかかっている。
そして、考えようによっては獲物と密接な関係にあるともいえる副学園長の足を、獲物を追うハンターの肉球が、これぞ悪役令嬢という勢いで、激しく殴打する。
『シネェ! シネェ!』と。
『もう死んでいます』
という目の副学園長はそのまま静かに、話し合いを終了させた。
「追って連絡します」と。
パタン――。
荒ぶる妹を抱え、廊下へ出たクールなお兄様の手には、よれた封筒が握られていた。
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