アンバランス
春乃
アンバランス
デイ・アフター・バースデイ 僕のじゃない朝、もう苺がのってない半月
暗い夜 まだ暗いまま明るくなる ベッドの余白に青い曖昧
黒猫にしてみれば横切ってなどいないのです人間、ねえにんげん
もう片方のカーテン開けるまでしばらくひだりのつばさだけでとぶ朝
声をあげるから泡にして かなわない恋などかなえるものじゃないから
恋に掛かる枕詞のない不満論ずるふたりコインランドリー
花を買う。うつくしくないささくれと心が痛い。花とかを買う。
目を閉じるそのときだけ足元の影さえも消え わたし、うみかぜになる
ドライヤーしながら聞こえない曲を流す 身を守る結界を張る
割り切れず既約分数にしなかった気持ちぜんぶにバツがついてく
嘘色のばらのことばが「奇跡」なら奇跡はチープでやわらかいうそ
ワイヤレスイヤホン、ワイヤレスマイク 手が近代化しませんように
境内で割ったヨーヨーの裏側の色を忘れておとなになった
散り積もり根もとを飾る 好きな靴履いたままあの日眠りたかった
絆創膏貼る前の水洗いみたい 大丈夫になるための痛みだ
忘れても消えはしないなんて詭弁であの夜眠ってた防犯カメラ
荷物かご・ハンドル・あなた・わたし・荷台 左折軌道の無駄の青さよ
無風味のいろはすがない自販機で桃味を買って文句言うひと
ラッカーの匂いの街で菫の花摘まないあなただ 嘘をおしえて
背後の満月がどれだけ大きくて美しくても知らなくていい
アンバランス 春乃 @yuru_her
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