第4話 入部!エロゲ開発部
部長から、「部内会議を行う」との連絡を受けたため、ここで顔を出さないのも野暮だろうというわけで、部室に向かうことにした。
しかし、その足は俊足魔法をかけているはずなのに、重かった。
しばらく移動すると、間もなく例の部室が見えてきた。そこには堂々と『エロゲ開発部』という名前が載っている。学校という公衆の場には似合わない、下品な名だ。
「誰だ?部室の真ん前で失礼なこと考えているやつは」
部室のドアからひょこっと顔を出した部長がそう言った。
「それは、まさしく私のことですか」
「あ、なんだお前か。まぁ入れ」
私は部長の招きを受け入れた。
その部室には先ほどの部長、そして副部長、そして、意外にも女子部員が二人いた。
「私の前に二人も拉致ってたんですね」
「違う!このお二人は純粋にこの部活に入部してくださった、素晴らしい方々なのだ」
「はーい、素晴らしい方その一でーす」
そう大きく手を振る女子部員その一。
そして、私の存在など、気づいていないんじゃないかと思わせるほど、没頭してゲームをしている女子部員その二がいた。まだ、一言も話していない。
*****
「それでは、まぁ……。会議といきたいところですが、新入部員も入ったことですし、自己紹介といきましょうか。じゃあ、まず、副部長から」
「は?俺?」
副部長は自らの顔を指出した。
「……しょうがないな、えっと……」
なんだか、冷たい空気が走った。
「お……おい、なんでいきなりそんな黙るんだよ」
「「「「……」」」」
副部長以外何にも話さない。なぜならば今は副部長の自己紹介の時間なのだから。
皆、「早くしろ」の眼差しでその男の姿を見る。
さて、こんな雰囲気が苦手な彼に初っ端の自己紹介などかませるのであろうか?実に見どころである。
「無理だ!!おい、部長!変われ!」
「なんだよ、ヘタレ」
その部長の顔は凄まじい呆れ顔であった。
*****
「よし、じゃあ俺からだな。俺の名前はオサノだ。この部活の部長で基本、ゲームの企画とかは俺がやってる。ハイオワリ」
「簡潔ー」
「お前……。よくそんなのできるな……」
副部長が青白い顔でそう言った。
「こんなことすらできないとほんとにやっていけないぞ」
その声のトーンから、その台詞は結構マジの忠告であった。ちなみに、私もそれには同感である。
「じゃあ、新入部員はトリにするとして、次はお前でいくか」
「はーい!」
返事をしたのは例の女子部員その一であった。その二はまだゲームの手を止めていない。
「私の名前はライナと言います!絵とか描いてます!そこのゲームやってる子はユウナ!親友です!」
「ども」
あ、やっと喋った。
ちなみに、彼女がやっているゲームは『同級生』と呼ばれるゲームらしい。結構、有名らしいのだが、私は知らない。まず、ゲーム詳しくないし。
「で、こいつが副部長のササノね」
「ああ、うんよろです。プログラム打ってます」
こうして、皆の自己紹介が終わった。
「じゃあ、次はお前だな」
「あ、そうですね。えっと……。何を言えばいいですか?如何せん、田舎者なもので……」
「まぁ、名前と好きなゲーム……とかはなさそうだな」
「はい、ないです」
私は少し食い気味で言った。
「じゃあ、うん、名前だけでいいや」
オサノは何か、面倒くさそうな感じを醸し出していた。
「あ、ノゾミルです。よろしくお願いします」
すると、私にささやかな拍手が送られた。
*****
「では、本題に移る。今回集まってもらったのは他でもない。これについてだ」
オサノは私たちにとある紙を見せた。その紙のタイトルは『エロゲ開発部廃部通告の知らせ』というもの。
「先日、生徒会からこのような紙が届いたのだ」
「知ってまーす」
ライナがお気楽に応答した。
「ああ、ノゾミル以外は知っていると思う。とここに書いてある廃部通告免除条件なのだが、とにかく部員数はクリアした。残りはこの実績というわけなのだが……。それが、ミミニアリストアカデミーの大賞を取るとのことなのだ」
「え、まじですか」
ライナが驚愕した様子を見せた。
「まじだ」
「なんでそんなことに……」
「生徒会にそう言われた」
おいおい、あのか壁ぶち破りのことは話さないのか?
補足だが、あの壁はミミニアリストの優秀な修復魔法によって、完璧に修理されている。
そういえば、私の分からないことが一つある。
「あの、ミミニアリストアカデミーって何ですか?」
すると、一同がこちらのほうを向いた。
「ああ、そうか、知らないか」
そして、ミミニアリストアカデミーについての解説がされた。
*****
ミミニアリストアカデミーとはミミニアリスト魔法学校内の出展コンテストだ。文科系の部活や団体等々が作品を出展し、アカデミー運営側や一般投票などの審査で最終的な受賞作品を決定するものである。ミミニアリスト魔法学校はかなりそういう団体が多いので、これで大賞を取るのはかなり難易度が高い。このエロゲ開発部でも一番高いところで優秀賞とのことだ。ちなみに優秀賞は受賞する中の一番下とのこと。
「これ、いけるんですか?」
「正直、厳しい」
「でしょうね」
*****
正直、やろうとはしているみたいだが、雰囲気は諦めムードである。
「あの……。もう諦めムードのような気がするのですが」
「正直、諦めてるよ……」
ダメだ、部長を含め、皆の士気が下がっている。
「ちなみに、その優秀賞の作品って……」
「あ、これ」
部長は『私の初心なラブリンス』というゲームを取り出した。
そして、帰宅後、例のソフトを持って帰ってきていた私は唾をのみ、
私はほんの試す気持ちでソフトを自分のパソコンの中に入れ、ゲームを開始した。
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