ヘブンリー・ブルー

月夜の雨

ヘブンリー・ブルー

金髪に染めているから先生に帰れと言われあの子は帰った


教室は今日も欠席一名で借りっぱなしの少年ジャンプ


耳たぶのほくろがまるでピアスだと横髪あげて覗き込まれる


はい先生どうしてですか 質問は許されなくて喉に灼きつく


消しゴムで書き間違えた文字を消すルーズリーフに残る傷跡


ブランコを立ち漕ぎすれば目の前に空が迫って逆さに落ちる


青空に吸い込まれてく ヘブンリー・ブルー、ブルー、ブルー、ヘブンリー


新しい朝べつに来なくていいよ朝顔みたいに咲いて生きるよ


何もかも失っているぼくたちは噛んで砕いてアイスボックス


夜光虫みたいにぼくら自販機の灯りの下でうずくまったね


父親が帰ってきたらベランダに友は逃げ込む耳をふさいで


色つきのリップを塗ったくちびるで煙草を咥え火を点ける友


クマゼミがジジッと鳴いた おにぎりのシートを二つするりと外す


自転車のライトに映る霧雨が彗星みたいに流れて消える


無香料には無香料のにおいがあってスプレーボトルはからからと鳴る


青アザにまぶた腫らした友が言う「やっぱやめるわ、高校受験」


正しさを求めています世界中どの単位でも測れる正しさ


たたかいをぼくらは選ぶ制服のスカートのひだ尖らせてゆく


透明なスタンプこの手に押してある生きてくための許可証として


学校のプールの底に今もまだそっと沈めたビー玉ひとつ

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ヘブンリー・ブルー 月夜の雨 @moonnight_rain

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