羽化

皆さんは、○○の秋と聞くと何と答えますか?

食欲やスポーツなどありますよね。

俺は、美術部なので、美術の秋と答えます。

そんなある日に顧問から、美術館に有名な画家の絵が期間限定で飾られるので、

見て参考にしようと提案があったので、美術館に行くことになりました。



美術館の中を10分ぐらい回っていると取材をしてる場所が目に入った。

取材してる所に近づくと不思議な光景が広がっていた。

その理由は、絵に白い布が掛けられているからだ。

取材してる一人が質問をした

「なぜ、布をかぶせているのですか?」

すると作者は

「長時間見て欲しくないのと、近距離で見て欲しくないからですね」

その答えを聞いて、俺は、疑問が浮かんだ。

絵を見る時は、全体を見て、その後に詳細に見る為に隅々まで見ると思うから、

矛盾を感じた。

そんなこと思っていると作者が布に手に掛けたと同時に、近くにいた従業員が看板を

近くに置いた。

すると作者が

「写真は、出来るだけ離れて撮っても下さい。撮っても2・3枚でお願いします。

後は、動画は、駄目です。」

と説明した後に作者は、布を取った。

するとフラッシュが連続で見えた。

しばらくは、無理だなと思って、作者を見ると気になる点があった。

作者は、左手に包帯が巻かれていた。

つまずいて怪我でもしたのかな?と思った



10分ぐらい違う絵を見て例の絵の前に視線を送るとカメラマンは居なかった。

今なら、ゆっくり見られるなと思って、絵の前に移動した。

その絵は、蛹(さなぎ)から、羽だけ出てる絵だった。

最初の印象は、生命の進化でも書いたのかなと思った。

次に全体の絵を見ると森の中に一本の枝が土に刺さって、そこに蛹があった。

その後に感じたのは、蛹と羽が少し光で反射してるように見えた。

そんなことを考えていると思ったより、時間が経ってることに気づいた。

そこで、やってしまったと思った、作者は、長時間見ないでくれと言っていた。

注意されて、面倒ごとになりたくないので、その場を離れた。

その後は、違う作品を見て時間を潰した。

時間になったので、美術館の正面玄関に部員が集まって、顧問が点呼した後に軽いミーティングをして、

現地解散になった。



家に帰って、椅子に座って、机のPCの電源を付けて、今日見た作品を思い出す。

確かに顧問が言った通り参考になるものはあったと思う。

PCの準備が出来たので、イラストソフトを起動させる。

特に課題もないが、秋桜(コスモス)の花畑を書くことにした。

下書きをしてる時に、秋桜の花の色って何種類あるのか気になったので調べることにした。

調べてみると約42種類あると書いてあったので、そこから色合いを考えると

ピンク、赤、白、黄がバランスがいいだろうと思って、下書きした花の近くに色の指定を書いた。

指定の色を書き終わったので、今日は、ここまでだなと思ってペンを置いた。

そこで、今日は、まだ手洗い、うがいをしてないこと思い出したので、洗面台に向かった

蛇口を捻って、水を出して、手を濡らそうとした時に、左手の甲に黄色の小さな粒が一つ見えた。

剥がれたペンキや絵の具でも付いたかなと思って、右手で払った。

払うが、取れない・・・これは、完全に固まって取れないなと思って諦めて、手洗いとうがいをした。



翌日、放課後に美術室に向かう。

美術室には、部員が、昨日の作品ついて話していたので、話の輪に入ることにした。

話していると、対面に座ってるAが、左手の甲を爪でかいていた。

「虫に刺されか?」と質問をすると

「あぁ、そんな感じかな」と返って来た

秋と言ってもまだ蚊もいるから、珍しいことではないなと思った。

そんなことしていると顧問が来て、軽いミーティングをして、絵を書くことにした。

しばらくキャンバスに筆を走らせていると顧問が、手を叩いて、今日の活動の終わりを知らせる声がした。

その合図を聞いて、道具を片付けているとAの左手の甲が目に入った。

甲からは、皮膚が剥がれて、少し血が滲んでいた。

そんなに痒いのか?と思って声を掛けようとしたら、Aは、何かを急ぐようにその場を離れた。

まぁ明日でもいいかと思って、片付けを続けた。

学校を出て、家に着いて、手洗い、うがいをする為に洗面台に向かった時に、左手の甲に違和感があった。

その違和感は、一部が、縦に2・3ミリぐらいの線で腫れていたからだ。

虫に刺されたかなと思って、うがいと手洗いをして薬を塗ることにした。



翌朝学校の教室に入って、友達と話しているとAがないことに気づいた。

風邪でも引いたかな?と思っていると担任が教室に入ってきて、朝礼が始まった。

朝礼の中で、Aは、病院に行って、遅れてる来ると話に出た。

それを聞いて、そんなに虫刺されが酷かったのかと思った。

3時間目の授業が終わった時にAが教室に入って来た。

Aの左手には、包帯が巻かれていた。

そんなに酷いのかと思った。

放課後になって、Aに質問をした

「そんなに虫刺され酷かったのか?」

するとAは、小声で

「・・・・がいたから切った・・・・」

よく聞こえなかったので、

「すまない、もぅ一度言ってもらっていいか」

と言うと

「甲の中に蛹(さなぎ)がいたから切った・・・・」

と聞こえた。

その答えを聞いて、うん?となった。

すると

「意味が解らないと思うが、居たんだよ、蛹が甲に・・・最初は、小さな黄色の粒が甲に付いていた。

次の日には、芋虫みたいなやつが、甲の中に居た・・・今朝には大きな膨らみがあったから、包丁で切った・・・」

そこまで聞くと自分の左手の甲を見た。

なんと、自分の甲にも大きな膨らみがあった。

俺は、カバンから、部活で使う為に持っていたカッターを持ってトイレに向かった。

洗面台の水を流して、カッターを甲の皮膚に近づけた。

薄く切ればいいと思って、皮膚を切った。

すると血が片方に流れるではなくて、左右に流れ始めた・・・

流れる血は、蝶の羽を思わせるみたいだった・・・

そこで、Aが蛹と言った意味が解った。

ハンカチで血を止めて、Aがいる教室に向かった。

するとAが

「お前も居たのか・・・」

「あぁ、居たみたいだ」と答えた。

何故こうなったのか、考えた。

確か、黄色の粒を見たのは、美術館から帰ってからだ。

そこで質問をした。

「Aは、蛹の絵を長時間見たか?」と聞いた

「あぁ見たよ、森があって、土に枝が刺さっている所に蛹があるやつだろ」

その答えを聞いた時に、作者の注意ごとを思い出した。

長時間見ない、近くで見ないだったなと記憶の中から思い出す

あの絵には、何か秘密があるのか?思ったので、Aに蛹の絵に秘密が無いか調べないかと提案をした。

Aは、その提案を聞いて、スマホで調べると言って、調べていると作者が今朝自殺したことが解った。

自宅で亡くっていた。

報道の内容を読むに背中に斧が刺さっていたみたいだ。

予想では、斧を床に固定して自分で倒れたみたいだ。

そして、遺書があって、内容は

「空を飛ぶ為に殻を割った」と書いてあった。

それから、自宅からは、無数の潰れた蛹とすり鉢で粉になった羽があったそうだ。

それを聞いて、Aと俺は、とある仮説を立てた。

作者は、蛹を粉にして絵の具に混ぜて、蛹に色を付けて、羽も同様で、色を付けたのでは?と仮説を立てた。

だから、あんな注意ごとしたのでは?と思った。

今更、この仮説を確かめる為に絵を見ようとしても、違う美術館移動してるかもしれないので、真実は、解らないままだった・・

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