第15話 失われた幸せなひととき
粉雪が降っていた日だった。
その日は仕事も休みをとって待ちに待ったクリスマスデート。
どこに行こうかいろいろなお店をインターネットを駆使して探した。計画するのは空翔だった。予約は1ヶ月前にしないとすぐに予約はいっぱいになる。洋食にするか和食か、はたまた中華か。やっぱりここはクリスマスというのだから雰囲気のことも考えて洋食かなと洋食レストランを探した。クリスマスデートだけは夏楓も楽しんで出かけていた。何の服を着ていこうかなとか、プレゼントは何にしようかとウキウキしていたのを隣で見ていた。何気ない瞬間が幸せだったなと振り返る。誕生日はそこまで重視していないのか、街のイルミネーションの雰囲気や何となくざわざわする空間が夏楓が好きなのかもしれない。結局のところ、夏楓は空翔と一緒にいて居心地よかったのかというのは見出せない。謎めいていた。
前もってリサーチしていた欲しいものをそれぞれ仕事終わりに1人で買い物した。
夏楓はバイト帰りだ。あえて、何が欲しいとかは聞かなかった。意外とそれがサプライズになって、気に入ってくれた時の瞬間はひとしおだ。確か、今回はそろそろ財布のファスナーの調子がよくないと言っていた。長財布だった気がした。それなりのブランド革小物なら当たりじゃないかと思う。占いでラッキーな財布の色は緑とか言う占い師が多いが、そもそもそれを持っているからって金運うんぬんと言うが、お金は使うとき使うし、使わないときはずっと財布に入ってるものだ。色で決まるものでもない。経済は天下のまわりもので使った方が潤うんだけどなと思いつつ、高級ブランドの柄物をプレゼントした。まぁ、そこまでしなくてもいいのにと言いながら、喜んでいた。まぁ、そのプレゼントも別れた今となってはどうでもいい。なんでもいい。安くてもいいとまで思ってしまう。幸せなときは高い安いはもう関係なくなるものだ。相手の存在価値でだいぶ跳ね上がるのだから。ただそばにいるだけでお金以上の価値を得られていた。今ではその空間さえ手に入れられない。どんなに執着して、好きな物買ってあげるから、いくらでもお金をあげるからと言っても、お金なんていらないって夏楓に言われてしまうだろう。付き合うってお金ももちろん必要だがそういうことじゃないんだよな。気持ちとか言葉とか大事だったんだろうなって別れてから気づく。
嘘つかなければよかった。
後悔してしまった。たくさんの嘘を重ねてしまったこと。
別に浮気とかではない。日常の何気ない嘘。それだけでも関係は良くなくなる。
分かってはいる。
今はとにかく新しい彼女を作るなんて考えられない。
それでも、今は彼女との思い出に浸りたい。楽しかったことを走馬灯のように感じたいのだ。
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