第26話 問題解決?

“魔水晶でテストしていたとき、オヌシの気を失ったであろう?“


“ああ。そう聞いている。“


“あれは魔力枯渇じゃと思われているようじゃが、ワシの仕業じゃ。“


“へ?リリスの?“


“そうじゃ。あのとき、オヌシから尋常ではない魔力が迸った。“


“ああ。両親から神レベルだったって……。“


“そうじゃ。あれではオステリアに見つかってしまう。“


“え!?“


俺は驚いた。オステリアという単語が出てきたからだ。女神オステリアは神界の住人。こっちには何も出来ないから、気にも留めていなかったんだが……。


“オステリアの意図が不明じゃが。オヌシを狙っていても不思議ではない。“


“で、でも……。神界から?さすがに……。“


“奴は、何でもやる邪神じゃ。気を抜くな。“


俺はリリスに文句たらたらだ。


“でもよー。それなら、そうと早く言ってくれれば良かったのに。お前居なくなってて心配したんだぜ?“


俺は不満そうにリリスに言った。そもそもリリスが居なくなって心配していた身である。文句も言いたい。


“こうして外とコンタクトが取れるようになるのに、時間が必要じゃったんじゃ。すまん。“


素直に謝るリリス。


なるほど、そう言うことだったのか。納得。


シュンとしているリリスを、それ以上責められない。


“いや、そう言うなら。こっちこそゴメン。裏で色々してくれていたのにな。そ、それで?俺は見つかってしまったのか?女神オステリアに。“


俺はちょっとビビりつつ聞いた。すると、リリスは笑った。


“ワシが何とか隠蔽したから大丈夫じゃ。今度から魔力を使うときにはワシに一言言っておくように。“


“ほ……。良かった。隠蔽って……。お前、そんなことも出来るのかよ。“


“ギリギリじゃったがな……。しかし、そのおかげで大変なことになってしまった。“


“大変?“


“うむ。ワシの姿が消えておったろ?。“


“ああ。どこ行ったのかと心配していたんだよ。“


“あれは。オヌシに喰われてしまっておったのだ。“


“……!?く、喰う?“


リリスは説明をしてくれた。


あのとき、あふれ出る魔力を隠蔽しようと俺への魔力に触れたリリスは、吸い込まれるように俺の中に吸収されてしまった。


このままでは、すべてを失うと思ったリリスは必死に俺の中(肉体的にと言うより、精神的なことらしい)で必死に抵抗した。


その結果、リリスの魂を俺の右手に封印することに成功したらしい。


“ほれ、その紋様。それはワシが作ったもんじゃ。“


“これ?“


俺は右手の甲に発生した紋様を改めて見てみる。


“それは古代龍人の魔法陣じゃ。そこがワシの新しいマイホームじゃ。“


“マ。マイホーム……。“


つまり、こういうことらしい。


オーブという存在は消えさり。俺の魂に同居する形で、同化している。


“それって、寄生虫……。“


“し、失礼な!人を寄生虫呼ばわりするとは!“


リリスはわりと本気で怒っていた。


“しかし、悪い点ばかりではない。“


“どういうこと?“


“こうして、オヌシの魂とリンクしているせいか。視覚化することも可能になったし、オヌシの魔力を借りれば実体化することも出来る。“


“思いっきり寄生しているじゃねーかよ!“


俺がツッコムと、リリスはポリポリと頭をかいた。見た目が可愛いだけに、憎めない。


“しかし、実体化?それってどういうこと?生き返ったってことか?“


“もって数時間じゃ。すぐに消えてしまう。まぁ、魔力を補充すればすぐに実体化できるから。疑似的に生き返ったとも言えるじゃろう。“


“そっか。でもよかった。このまま会えないかと思っていたから……。“


“なんじゃー。寂しかったようじゃのぅ。ウリ!ウリ!“


そういうと肘で俺のことを突いてくるリリス。


“や、やめろよ。痛いって。俺は赤ん坊なんだぞ!“


“はははは!悪かった。悪かった。“


俺達は笑い合う。


でも、本当に良かった。俺はリリスが居てくれることが嬉しかった。


“しかし、不思議じゃ。“


“何がだ?“


“魔力を制御しようとしたら、逆に喰われそうになったことがじゃ“


“オーブなのに、それをしようとしたリリスにも疑問だけどな。“


“オーブだからこそじゃ。オーブは魔力の塊みたいなものじゃ。“


“そうなの?“


“そうじゃ。しかし、他の魔力を取り込もうとするオヌシの性質は、まるで魂喰い(ソウルイーター)のようじゃ。“


“ソウルイーター?“


“ああ、そういう魔族じゃ。恐ろしい存在じゃ。物理攻撃が通らん。“


“俺はそんなんじゃねーし!“


“分かっておる。“


俺はふと気になった。


“そういや、エンジ・ストーンのときも、あれはお前が制御したのか?“


“ああ、魔力を隠蔽した。エンジ・ストーンの反応が収まったじゃろ?“


“やっぱり!“


俺は安堵した。なんだ、俺の才能あるんじゃん。


“良かったぜー。無属性とか反応でたから、落ち込んでいたんだよ。“


“いや、あれはそのままじゃよ。“


“は?“


“だから、そこはワシは何もしておらん。“


“え?え?何も?“


“ああ、誓って何もしておらん。“


“う、嘘だろ。じゃあ、俺って魔法使えないの?“


“魔力だけは、アホみたいにあるがのぅ。“


“アホって言うなよ。“


俺はショックのあまり項垂れた。


“赤子のそういうポーズを初めて見たぞ。“


“ど、どうすんだよ。俺はこのまま魔法使えないと魔人と戦う手段がなくなるぞ!“


“その辺は問題ない。“


“へ?どう言うこと?“


“ワシはオヌシの内部まで紐ついておる。言わば魂が繋がっておる。ワシが魔力を隠蔽すれば魔人はオヌシを探せん。“


“魂が……。“


“魂同化に近い。ちょっと気を許すと喰われそうじゃがな。ふははは!“


リリスさん。それ笑い事じゃないって…………。


でも心配のタネが一つ減った見たいだ。


リリスが制御してくれているのであれば、無理に魔法を覚える必要がない。問題は魔人だったのだから。

その時の俺とリリスは、楽観に過ぎた。


それを後で知ることになる。



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