正夢かピエロか
春本 快楓
プロローグ
学校から帰ると、重たい教科書がたくさん入っている鞄をリビングに投げ捨て、すぐに、二階にある自分の部屋へ向かった。
部屋に入って、勉強机においてあったノートパソコンを起動させる。
今の時間は午後四時半。パソコンが起動したら、文章作成アプリを開く。
頭の中をリセット……画面だけに集中しろ、全意識を頭の中にあるストーリーに……。
それから、ひたすらキーボードを打ち続けた。ストーリーを絶えず組み立てながら、常に頭を働かせながら。
ふと、時計を見ると、今が十時半になっている事に気がついた。
ご飯を食べるためにリビングへ向かった。
洗い物をしているお母さんが僕をじっと見てきた。
「ゆうり、また小説書いていたの?」
「前からそうしているじゃん」
わざとぶっきらぼうに答えたが、お母さんは何も気にしていない様子だった。
「勉強もしないで……作家として食べていける人は限られているのよ」
毎日聞く、お母さんの説教を軽く流しながらご飯を大口で食べる。僕自体が少食なので、量は少なかった。なので、一分弱で食べ終わった。
「ごちそうさま」
お風呂と歯磨きをパパッと終わらせ、ドライヤーで髪をかわかし部屋に戻ろうとした時だった。
「そういえば、ゆうりの友達って言う女の子が、これをゆうり君に渡してください、って」
そう言って、お母さんは紅白色の大きい枕を渡してきた。
「女の子ってだれ?」
「名前聞くのわすれちゃった」
おい……。
「でも、すごい色白でかわいい女の子だったよ」
いや、僕に女子の友達なんていない。っていうか、女子どころか……。
「どこで会ったの?」
「家まで来てくれたよ。今日の七時ぐらいだったかな」
「また来たらこれ返しておいて。僕に女子の友達、いない」
「返すの? これ、触ってみた感じ、すごい良いやつだよ」
あー、もう面倒くさい!
「わかった使う。おやすみ」
さっきの一瞬でどっと疲れた。これから小説の続きを書こうと思っていたのに、眠くなってきた。
部屋に戻って、ベッドで横になってみる。
とても気持ちいい。
試しに紅白色の枕を頭の下に置いてみた。
「やばい、めっちゃいい」
誰もいるわけじゃないのに、思わず独り言を呟いていた。
え、本当にやばい、このままもう眠れるかも……。
今日。
休み時間のチャイムが鳴り、三限目の授業が終わった。
おい、ゆうりずっと一人だぞ。
お前話しかけてやれよ。
は、いやだよ。前に話しかけたけど、もう話しかけてくんなって。
急に変わりすぎだろ。
太郎と陽一の話す声が聞こえる……いや、耳を傾けるな、目の前にある紙に集中しろ、プロットを組み立てろ。
絶対に手をとめるな、僕が死ぬまで、絶対に。
ふと目を開けると、蒼色の光が目にダイレクトに入り込んでくる。
「あれ?」
ここ、僕の家じゃない? アニメでよく見る実験室のような白い部屋。周りには僕と同じように戸惑っている人が三人いた。
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