どん底の男を羨ましがる牧師

天川裕司

どん底の男を羨ましがる牧師

タイトル:どん底の男を羨ましがる牧師


ト書き〈牢獄の中〉


牢獄の檻の前に、牧師が来てくれた。その牢獄の中にいる男はどん底にある。

人生のどん底。人間のどん底。もう二度と這い上がることの無いどん底。


その牢獄の中にいる男は他人を殺し、その他人はもう生き返らない。

帰ってこないのが証明しているように二度と取り返しのつかない、

そのスタートラインをこっちにまたぐことができない境地にある。

この境地の事をこの男は特にどん底と呼んでいる。


この男はヤクザでも何でもなく普通の一般人。


この男の心の中に「不良じゃない人ってこの世に居るんだろうか?」

という或る時、誰かに教えてもらった言葉が飛び交う。


そこへ牧師が来たのだ。

この牢獄の男の殺人は、半分が自分の欲望によるものだったが、

もう半分はそうさせられたのだ。


しかし世間はその殺人のことを、外部刺激によりそうさせられた、と裁定付けた。

つまり法律でそう決まったのである。


だからこの男に極刑はなかったが、男は二度と戻れないその境地にありながら、

自分で自分に極刑を科して居た。


牧師は牧師ながら、その男に神様のことを教えた。

その男は宙の一点をずっと見つめながら

牧師の言うことを聴いてるのかどうかもわからなかった。


しかし牧師がその場を立ち去る時、一瞬ふと振り向いて、その男を羨ましがった。

神様とイエス様に慰められるその男が羨ましいと思ったのである。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=Hi3xvlK7FwQ

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どん底の男を羨ましがる牧師 天川裕司 @tenkawayuji

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