暴食姫

いぎたないみらい

まーーた、いなくなってるぅぅ!!

だだっ広い王城を一人の執事が駆け回る。


(どこに行かれたんだっっ!!)


一階…、二階…、三階…。角の部屋から、端の部屋まで。部屋の隅から隅まで。


(咎められるのは私なのにっっっ!!)


王城の見張り塔から、王城の地下の食糧庫まで。素早く、けれど確実に、しっかりと見ていく。

そして気付く。


(いや待て。あの方のことだ。まさか訓練場に……っ!?)


また駆ける。


訓練場に着くと案の定、彼の仕える者がいた。

彼は大声で主人を呼ぶ。


「姫様!!さっさと部屋に戻って、大人しく授業の続きを受けてください!!」


姫は大声で返事をする。


「ヤだね!!受けさせたいのなら!私と手合わせしろ!!」


そして姫は負ける。




「くぅぅ~~っ!もう少しで勝てたの

にぃぃ~~!!ぐーやーじーいー!!!」

「静かにしてください、姫様」


綺麗な姿勢で頭に本を3冊のせたまま、歴史の授業を受けつつ執事と喋る。


「では最後の質問です。167年前、この国の貴族で、独断で他国への侵略をおこなった史人は?他にどのような事をしたかもお答え下さい」

「ペングドレンツ・ハルツ・シュトマー氏、第15代ハルツ辺境伯。魔物の生態系の調査団に参加し、アルケーの本来の生態を見抜いた。それは世界に新たな常識をもたらし、同時に、常識の正確さが疑われるようになった出来事だ」

「……ハァ。正解です」

「ぃよおーーし!授業終わりーーーぃ!!」


彼女はヘルメスト王国の第三王女、ベルゼローナ・アドブル・リ・ヘルメスト。


「な~あ、ロゼルト~。なんでまだこんなことするんだ?私はもう16だぞ」

「ハァ………。姫様、ご自身が周りからどのように呼ばれているか、ご存知ですか?」

「うん?『暴食姫』だろ?」

「ご存知になら、なぜ汚名返上なさろうとしないんですか?」

「興味がないから」

「ハァァ…………」


彼はベルゼローナ王女の執事、ロゼルト。

彼は姫のある行動に悩んでいた。


「あのですねぇ……」

「ベルゼローナ王女!いらっしゃいますか!?」


執事が説教を始めようとしたところで、ヘルメスト王国の第一騎士団団長が訪ねて来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る