誰もが小学生だった

野山ことは

第1話


テープ貼り黄色い春を閉じ込めた理科のノートの初めのページ


鼻鼻鼻自分の田んぼ横シュッシュ唱えず書ける人になりたし


「相川」じゃないこと先祖に感謝した予防接種へ向かう廊下で


学校で初めて泣いた赤白帽ゴムがはじけて目を直撃し


ダンボールかける役目に選ばれた私のジャガイモでしゃばったから


日曜日から待っていた日直の小さいほうきとちりとり係


先生が言ってた「世紀末」てこれ?進めば野良犬曲がればジャイアン


夏色の絵の具が靴に入ってて裸足で帰ったメロスみたいに


ワンピース着たあの子だけから香る小瓶につまったオーシャンブルー


三十本分のガラスが牛乳の海に浮いてて大事件だった


「この袋イナゴいっぱいとれてから登校してね明日の朝は」


電話帳見てた絵本の代わりとて鈴木茂が十五人いた


腹痛の暗示解けずに見れぬまま「タルルートくん」最終回なり


「できたての道路はあったかいんだよ」触ってみてと靴急ぎ脱ぐ


気づかれずシューっと手すり二階まで滑りきったら今日大安です


ストーブ前ぐっしょり並んだ手袋と白い窓見るチャイム待ちつつ


ポストまで行った帰りに塩五キロおつかい頼まれ荷台に結わえ


ぞうきんをゆすぐバケツの氷水お湯足す班長後光差したり


口喧嘩兄が勝つたび減ってゆくドラゴンボールのすごろくのコマ


拐われる気がし今まで黙ってたピアノの帰りに見たUFO


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誰もが小学生だった 野山ことは @kotonohanoyama

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