第3話 狐~bakasi~
「そういえば、森井さんって何組なの?」
僕――星井照は、昨日助けた少女、森井華に質問をする。
「私は1-1です。」
「そっか…って1個下なの?!」
「え?貴方2年生なんですか?」
「てっきり同学年かと…」
「ひどくない?これでも僕意外と2年生っぽい思うけど」
「でもあなた雰囲気が優しそうなんですよね」
「だから上級生のような怖さがないっていうか」
≪星井、すまんがいったん撤退しよう、さすがに刀を持ってるのはまずい≫
「ごめん森井さん、次選択授業だったの忘れてた!」
「またあとでね!」
そう言い残し僕は走り去る
「かっこよかったなぁ」
「はぁ~危ない危ない」
僕はどうにかみんながいない位置で零に玲へ戻ってもらい、選択授業の場である音楽室へ来ていた。
「照!珍しく遅かったな」
「あぁ、ちょっとボヤ騒ぎというかなんというか」
「大丈夫だったのか?」
「なんとかね」
「それよりも東、今日は楽器の実習だっけ」
「そうらしいぞ」
僕の友達の東雷豪と授業前にそんな会話をしていると
「よし、みんな!今日は新しいファミリーを紹介するよ!」
そう、この口座はみんなのことをファミリーと呼ぶらしい。
担当である
「藤野天狐です!よろしくお願いします!」
「また一緒ですね!星井さん!」
「勘弁してくれよぉ」
結局このあとどうして知り合いなのかなどをめちゃくちゃ問いただされた。
「大変でしたね!」
あははっと笑いながら僕に話しかけてくる藤野さん。
「笑い事じゃないんだよね」
「まさか照に友達ができるとは」
「俺はうれしいよ」
「東、お前はどのポジションなんだよ」
そう困惑していると
「それじゃあ今からセッションしましょうか!」
「それじゃあグループを適当に作るわね!」
と青野先生がいいグループに分かれ各々で作業していく。
そうして学校生活はどんどん過ぎてゆく。
「あー楽しかった!」
今僕は同じグループになった東と藤野さんと帰っている最中だ。
「そうですね!ギターがあんなに楽しいとは!」
「そうだな!俺も初めてエレキなんて触ったけど楽しかったぜ!」
「僕もベースなんて初めてだったけど楽しかった!」
嗚呼、友達と談笑して帰る。なんて楽しい時間なのだろう。
やっぱり非日常よりも日常の方がいいのかもしれない。
そんな風に考えていると不意に
「あ、ここ」
昨日来た民家のような雑貨店だった。
「前は狐面の少女が店員さんだったんだよね」
「開いてるかな?」
「東、藤野さん、入ってみない?」
そう問いかけた時だった。
「だめ!」
急に藤野さんが声を荒げて制止する。
「どうしたんだよ天狐」
東が不思議そうに聞いている。
「い、いや」
「えぇ…と」
どこか気まずそうにする藤野さん。
「わかった」
「あと私こっちの方なので」
「じゃあな、天狐」
そういい別の道を歩いていく僕と東
「いやぁどうしたんだろうな、天狐」
「あぁ、ってか仲良くなるの早くないか?」
「そうか?普通だと思うが」
「そんな早く普通は仲良くなれないから!」
「そうかぁ?」
疑問がる東を横目に商店街を歩いていく。
すると
「何か降ってきてないか?」
「え?」
そんなことを言うと同時に空から何かがまた降ってくる。
『狐の少女はどこだ?』
『出てこい!狐の少女!』
「狐…もしかして」
「照?あいつの言っていることがわかるのか?」
「い、いや適当言っただけだ」
どうする…人も多いしこんな場所じゃ玲を電話で呼んだとしても融合はできない。
「打つ手なし…か」
「逃げるぞ、東」
「…東?」
「何か来てる…あのビルの上だ!」
いわれた方向を見るとそこには
「待たせたわね!」
――狐面の少女だ
「今こいつを何とかするわ」
やっぱり、天狐とどこか似てるような?
「
今度は近接をしながら斬撃を飛ばす連撃式になったようだ。
『なるほど…少しは貴様も進化しているようだな』
「なんて言ってるのかわからないけど…馬鹿にしないでよね!」
どうやらフィーリングで何言ってるか掴んでるようだ。
「さて、時間もかけたくないしね」
「新技、行っちゃうわよ!」
「化かし化かされ…その末路は如何なるものか!」
「狐の本気を思い知るがいい!」
「
「――え?」
と東が拍子抜けな声を出す。
しかし名前とは裏腹に
「はぁぁぁぁぁ!」
狐、狗、狸の形のエネルギー体が現れる。
「これが今の私の全力よ!」
そうして全てのエネルギーが怪人へとぶつかって行き
『なるほど…これが狐の、あいつの力か!』
『一時退散だな!』
その言葉を怪人が行った直後、怪人が立っていた場所が爆発する。
「やった!」
喜んでいる狐面の少女、と
「よかったぁ!すごいなあの人!」
東。
わかったから少し落ち着いてほしい。
「ありがとうございます」
そう僕は狐面の少女に話しかける。
「君は確か…あの勾玉を買いに来た子だね。」
「君も災難だね、こんなに怪人がらみのことに会うなんて」
「…こんなに?」
「だって3回目だろう?巻き込まれるのは」
おかしい、この人に会ってるのは2回だけだ
僕があった怪人は最初に会ったこの商店街のジューン・ブライド、学校のケーキ・カット、そして今回の怪人だ
なぜ2回目のケーキ・カットに会ったのを知っている?
「貴方とは2回しかあってないと思いますが」
僕は少し威圧する感じで問いかけてみる
「そんなに怒らないでよ」
「別にいいだろう?知っていても」
「貴方は、どうやってあいつとあった俺を見たんですか?」
「なるほど?君は感情が昂ると一人称が変わるようだね」
「論点をずらさないでください」
「俺はどうやって見たかを聞いてるんだ」
「あーらら」
「まぁ気にしないでよ」
「私は狐、化かすのが本質だからさ!」
そう言って消える狐面の少女。
「照、あの人と知りあいなのか?」
「あぁ、前にも怪人に絡まれた時にちょっとな」
「照が怒るなんて珍しいな」
「あの野郎…一体なんのつもりなんだ」
それに取り逃したってことはまた襲来する可能性があるな。
東や藤野さんと一緒じゃない時だといいが。
次の日、僕らは普通に学校生活を送っていた
「昨日の狐面の人、すごかったな!」
――東を除いて
「お前さぁ…すごかったのはわかるが、流石に次の日すらもずっとテンション上がるのはすごいな」
「だってさ照!あんなヒーローみたいな人なんて見ないぞ!」
「そりゃそうだけどよ」
「仮面被ってるってことは普通の生活もあるわけだろ?」
「もしかしたらこのクラスに本人がいる可能性だってあるわけだ」
「だからもう少し声のボリュームをだな」
と東を諌める
「そうだな」
あの怪人、一体どこへ行ったんだ
絶対再出現するはず…
「まぁそれよりも授業準備だな」
そう言い次の数学の準備をしていく。
今日の昼休みも、玲と特訓をする。
「もう少し速度をだな」
「人外のお前の求める速度と俺の限界の速度は違うっての!」
「そう言いながらも速くなってきたじゃないか!」
「だいぶ無理してるがな!」
そうして僕と玲は模擬戦を続ける
速度は玲よりも遅いけれど、それでも食いつくことはできる。
「なんかお前速度どんどん早くなってるな星井!」
「なんか速度の出し方わかって来た気がするぞ!玲!」
「でもこれ人間の範疇を超えてきてる気がする」
「僕って何者なんだろう」
「私と融合したから今は一時的に私の力を貸してるだけだ」
「お前本人はただの人間だぞ」
「そっか、よかったぁ」
「――何か来る?」
僕はいったん手を止め廊下の方を見る。
「玲、嫌な予感がする」
「行こう」
「わかった」
そうして僕と玲は校舎の方へと向かう。
「やっぱりな」
『ほう?まるで予想ができてたかのような物言いだな』
「あの時お前は一時撤退だ、と言っていたからな」
「どうせどっかで来るだろうと…」
僕が言いかけると
「なんで君が…この前倒したはずじゃなかったっけ?」
「まぁそこまでは予想がついたよ」
「狐面の少女!」
「うーん…そう呼ぶの長いよねぇ」
「そうだなぁ」
「
「わかったよ、魔狐」
「よし、玲…いや」
「零、行くぞ」
「おう!」
「いったんフェーズ0だ」
「了解!」
「我が名のもとにおいて、その力を開放せよ」
「――神剣・零!」
「融合・承認」
例の体が光の粒子となり俺の周りを漂い
最初の時の鎧になる
「うん、やっぱりいったん防御よな」
「そんで」
「魔狐、お前だって見てるだけじゃないんだろう?」
そう問いかけると
「もちろん!」
と元気な声が返ってくる。
「
「
「「はぁぁぁぁぁ!」」
炎と狐と狗と狸が怪人に向かう。
しかし
『同じ手が通用するとでも?』
「はん!今のは小手調べってやつさ」
「えぇ…私は全力なんだけど」
「頑張ってついてこい!」
≪こいつには大火力ってことでフェーズ2だ!≫
「いいのか?そんなペースで使って」
≪大盤振る舞いさ!≫
≪大体は2までで倒せる≫
「よし、魔狐、俺はこれから大火力を出す」
「だから時間稼ぎ頼む」
「え?う、うん」
「シフト移行!」
「フェーズ2」
すると鎧がたちまち俺の体を離れて組変わりまた融合する
顔には弐、そして大剣があしらわれている。
「あー…これあれか」
「大剣かぁ」
≪別にいいだろ!≫
「あぁ、悪いなんて言ってない」
≪今度の呪文はこうだ≫
≪「レイ・ライ・ゴウ・ギウ・ガイ!」≫
「魔狐!サンキュー!」
「とどめ!行くぜ!」
≪「
そうして俺は電気を…雷を剣にまとわせ斬撃を繰り出す。
それはまるで剣が巨大化したようにも見えるほどのエネルギーだった。
「ハァァァァァ!」
≪「一・刀・両・断!」≫
真っ二つに切り伏せる。
『人間も馬鹿にならないようだ』
『後は頼んだぞ…みんな』
そう言い残し今度こそ爆発四散する怪人。
…名前わからなかったな。
「解除」
僕と玲は分離する。
「このことは内緒で頼むよ?魔狐さん?」
「えぇ、もちろんよ」
「それじゃあ私は去らせてもらうね」
そうして消える魔狐。
「さて…次の敵が来なければいいが」
「そうだな、星井」
――これがまだ序章であると僕たちはこの時は知らない。
ある場所でまた二人の少女が会話している。
「また負けたみたいね」
『はい…ブートニアが負けるとは』
「でも下位種なんでしょう?」
『まぁ、我々には遠く及ばないですが』
「なら、良しとしましょう?」
「次はいったん様子を見に行こうかしら?」
『え?貴方様が、ですか?』
「いいでしょう?スター」
『…仰せのままに』
スターは『貴方様』と呼んだ少女に跪き肯定をする。
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