能力者目撃談

ポロポロ五月雨

人殺しのアサルトフレア


 夜中未明、街には大きな爆発音が響いた。『ボゴォォンッ!』 並ぶ家々はススキが風に撫でられるようにミシミシと音を立てて揺れた。時を同じくして、炎も揺れている。明るく不定形な輪郭が 熱を持って揺らめくサマは、まるでこの どうしようもない惨状を嘲っているようでもあった。


「『パーカッション・ムテキ☆ドラマー』!!」


 その炎の中で、シルエットが躍っている。逆光で詳細は見えない。が、輪郭からして女だ。その上で腕が4本あって、各々の腕に竹刀程度の棒を持っている。「はっはっは! まったく、やんなっちゃうわ」 女は快活に笑うと、持っている棒をそれぞれカチ合わせて『カンカンカンカン!』 音を出した。


 その音を、まるで出囃子の代わりとして、もうひとつ影が現れる。


「あーあ、あッついねぇ。あついあつい」


 女だ。もうひとり女が現れた。


「さぁて、こんだけハデにやったんだ。なんであれケジメつけよぉか」

「ハデって? アンタがやったんでしょ」

「そんなこと、どっちでもいいだろ」


 後から来た女が、体を前傾に動かした。そして…一瞬の出来事だった。時間と時間の間で、4本腕の女は、本当のシルエットのように黒く、焦げていた。


「おつかれさん。私」


 生きている方の女はそう言うと、背景の炎に滑り込むように、どこかへ消え去ってしまった。

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