君の顔が好きだ。〜顔が好みなだけで始まるアオハルラブストーリー〜

106san

第1話 プロローグみたいなシーンから始まり。

 「好きです! 付き合ってもらいます!」

 

 「ヘっ…?」

 

 それは唐突な始まりだった。

 

 場所は、とある人気ロックバンドのライブ会場。

 そして、終演しライブ会場から駅への道に溢れかえっているファンという群衆の中。

 

 様々な人生の背景を持つ人でごった返している路上で、唐突に彼、立花銀次は手を取られ、そう声をかけられた。

 

 眼前にいるのは、知らない人だった。

 少なくとも、銀次にはすぐに思いついた知り合いはいない。

 

 格好はオシャレよりも、ライブハウスで活動するのに適したように物販で買ったであろうロックバンドの昔のアルバムツアーの時に販売されていたTシャツに紺のダメージジーンズ。

 そして、膨らんだボストンバッグを肩から下げている。

 

 バッグの中には、駅のトイレでも着替える用の着替えでも入っているのかもしれない。

 

 髪は染めておらず、日本人らしく黒。

 ちゃんと、手入れを怠っていないのか、黒真珠のような光沢があり、セミロングの髪が街灯の光を浴び軽く光っている。

 

 ルックスは正直に言って、整っている。

 少なくとも銀次にはそう感じる顔である。

 

 長めのまつ毛の目と鼻梁、リップを塗っているのか、少し色っぽい口元などの配置が絶妙で、正直、銀次の好みの顔の女の子である。

 

 …しかし、だからこそ混乱する。

 なぜならば、最初に思った通り、銀次の知り合いにこんな好みの顔の女の子などいないはずだからである。

 先ほどの彼女のセリフは聞き間違いだろうか?

 

 「あのー…。初対面ですよね?」

 

 「はい!」

 

 訝しげに聞くと、一瞬の迷いもなく、女の子は笑顔で返事を返してきた。

 どうやら、銀次の記憶は正しく、知り合いではなかったようだ。だったら…。

 

 「聞き間違えたと思います。さっき、なんて言いました?」

 

 「好きです! 付き合ってもらいます! そう言いました!」


 意味不明状態。

 聞き間違いじゃなかったことに、銀次は呆然と立ち尽くした。

 だって、現状の認識が正しかったら、初対面で告白されたことになる。

 電波系の残念な女の子なんだろうか?

 

 「ええと…、初対面ですよね? なんで俺にいきなり告白してきたんですか?」

 

 現状の最大の謎を思わず、銀次は目の前の女の子に問うた。

 すると、彼女は、非常に銀次にとって魅力的な笑顔でこう宣った。

 そう、宣言した!


 「あなたの顔が超好み! つまり、君の顔が好きだ!」

 「んなアホな!」


 そんな感じで、この物語は、この恋の物語は、顔が好みなだけで始まった。

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