stranger
石田 犀
stranger
夜半の鳥 価値のある恋がこの世にはなければいいが 鳴いている鳥
われわれに限ってという錯覚が人びとに空港を歩ませる
鳥の体ならばおそらく胃のあたり展開図には奥行きはなく
オソという名前をヒグマに付けたひと思うよ湿るような足裏
池袋の匂いがしない?札幌のやたらとひろい地下道行けば
電車ではなくて汽車だというひとの流木のような二の腕垂れる
もう薄いのど飴貼りつけながら読む誰も降りない駅の名前を
獣たち従えている空想の隊列にいま鹿が加わる
食べるのが遅いわたしに微笑んで犬歯が人にあることの虚
雪虫の死骸がすごく臭いこと語るタクシー運転手らは
よそ者の顔をしながらわたしだけヒグマ舎の厚いガラスに映る
母熊は猟師に撃たれました。この個体は保護されここに来ました。
父熊は生きているかも そう言ってきみから既に父になる昼
滑らかな鳥が魚を獲るために川に飛び込むたび痩せるさま
きりん舎の親子くず折れ合う奥で垂れ下がる夜明け色の舌二本
白樺が呼びかけてくる自由ってことばを使う時は気をつけて
前髪を漉きすぎていたこの街の開け放たれたすべての窓辺
夕映えは境を浮かび上がらせる人間とそれ以外の者の
見つめればいずれ一本線になる灯や家や親の相貌
恐れたがりなきみを許す、ひまわりのせり上がる案外細い茎
stranger 石田 犀 @sai_ishida
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