小説の書き出し集

ナノハナ

#1

 金魚が泳いでいる。太ももの下から抜けるように泳いだ金魚は、ただそこを漂っている。トイレの水面が揺らぎ、ぽちゃんと跳ねる水の音をききながら顔をあげると、クリーム色の壁がある。

 トイレの匂いはスーパーの野菜売り場に似ていて、座っているだけで酔いそうだった。金魚をもう一度見ようとすると、もう姿を消していた。

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