陰キャの引き籠もり歌姫の学校生活
水見
番外編
裏話①‼︎
「っと言うことで、始まりました。『裏話①‼︎』今回はお正月スペシャルなので、司会の自分、水見がキャラクターと一緒にお送りいたしま〜す‼︎」
作者と名乗る水見さんがマイクを持って宣言した。
「ところで、水見さん。何ですか?この企画は……?」
私、真田春は尋ねた。
「今、書いている小説『陰キャ引き籠もり歌姫の学校生活』が300PV超えていたのと、お正月のダブルいいことがあったのでそのお祝い企画です!」
「は、はぁ……。でも、300PVはおめでとうございます」
私はパチパチと拍手する。
すると、水見さんは首をかしげる。
「何で『おめでとうございます』なの?これは君、春のことを書いた小説だよ?」
ん?今、何て?
私は今さっき、エグいことを言われた気がした。
「え?私のことを書いたって、本当ですか……?」
私は恐る恐る尋ねた。
「え?うん。そうだよ。だから、春のおかげでもあるんだよ」
水見さんは笑顔で言うが、私は顔が徐々に真っ赤になる。
書かれてるってことは、私の生活がまるわかりってこと……?
「い、今すぐ、その小説消してください‼︎」
「え?何で?」
水見さんはわからないようだ。
「だって、生活がまるわかりですよ⁉︎恥ずかしいじゃないですか‼︎」
「え〜。いいでしょ、別に〜」
「よくないですよ〜‼︎」
私は消すため、水見さんの持っているパソコンに向かって走っていく。
「って、ダメ〜‼︎」
そう言って、水見さんはパソコンを守るために走り出した。
——この配信は終了しました。
◇◇◇
十分後、やっとちゃんと企画が始まる。
私たちは鏡餅が上に置いてある、こたつに入りながら企画を始めることにした。
ちなみに小説は消せなかった。
私は無傷だが、水見さんは疲労困憊している。理由は水見さんは運動を全くしていないからだ。
走り込みをしている私に勝とうなんて百年早い。
データは消せたのだが、この小説はアナログで別のノートに書かれ、何度でも書けるため、小説は消せないのだ。
……くそ‼︎
さて、小説のことは置いておこう。
今の状況は水見さんはめっちゃボロボロになっていながらも、司会をしている。
「ぜぇ、ぜぇ。ゴホゴホ……。はぁ。っということで、始めていきたいと思います。司会進行役の水見です。ではまずは(二話までの)キャラクター紹介。主人公の真田春‼︎」
私はぺこりとお辞儀する。
あぁ、本当に消したかった。小説……。
私の気持ちは最大の黒歴史を持った高校生だ。
「次は春の姉……じゃなかった。兄、真田若葉‼︎」
そう言うと若葉が出てきて、こたつに入ってくる。
「水見さん、性別間違えないでくださいよ‼︎」
「いや〜。なんか間違えちゃって。親の方も母親を父親って呼び間違えない?」
あはははっと水見さんは笑って聞いてくる。
「え?若葉、先生を言い間違えることはあるけど、親の性別を間違えるとか……ないよね……?」
「あぁ、ないはずだ。……普通は」
私たちは水見さんの言葉に困惑する。
困惑させている水見さんは笑顔で首を傾げていた。
水見さんって、作者なんだよね?普通は親の性別とか間違えないわけで……。え?そんな人が作者で大丈夫なの⁉︎
私の頭の中では今、水見さんが頭悪い人説が浮上してきた。
「春さんや、なんかさ失礼なこと思ってない?」
「え⁉︎」
私は水見さんに聞かれ、肩をビクッとさせた。
「い、いえ、考えていません」
「そう?」
水見さんは私をじっと見て疑っていた。
「ほ、本当です‼︎」
「わかったよ。考えていなかったことにするね」
私はほっとする。
よかった〜‼︎
(わっかりやっす……‼︎やばい、笑う)
私の知らないところで、水見さんは私に顔を見せずに笑いを堪えていたとか、堪えていないとか……。
「では、次に新キャラ、名前は……」
水見さんは急にパソコンで自分の作品を検索し、画面をスクロールしてやがて止める。
「あ、そうだ。そうだ。名前は浅野夕美だ‼︎」
すると、夕美先輩が出てくる。
「は〜い‼︎あたしが浅野夕美です。あけおめ〜‼︎」
そう言って、バチンッとウインクをきめる。
な、なんかいつもより夕美先輩テンション1.5倍おかしくない?
私がじっと見ていると夕美先輩がプルプルし始めて、赤面していた。
「って、何よこのセリフは‼︎水見、どうしてくれるのよ‼︎」
夕美先輩はツカツカと水見さんに歩み寄って、胸ぐらを掴む。
あ、水見さん、いつも温和な夕美先輩を怒らせた。私、知らないよ……。
「え?あけ……いや、夕美がノリノリでしてくれると思ったからだよ?」
「そんなわけないじゃん。そして、名前間違えんな‼︎明美って言おうとしたでしょ‼︎そんなキャラ考えてないし、いないでしょ‼︎」
夕美先輩めっちゃ怒ってるな……。
「あ、はは。なんか夕美先輩を明美先輩って呼び間違えることがしばしあってさ……」
「もう……」
夕美先輩はため息をつき、水見さんの横に座ってこたつに入る
「仕切り直して、今回はこの自分含め四人でお送りします」
水見さんは笑顔で言う。
「まずは何から話すかだけど、春たちは何から聞きたい?」
水見さんはこちらを向いて尋ねる。
え……。決めてなかったの⁇
私はそのぐらい決めといて欲しいと思った。
「そうだな……。まず、どうしてこんな番外編を書こうと思ったかだ。全く本編進んでないだろ‼︎」
若葉はド正論を言う。
「え……?ちょっと本編書くのめんどくさくなってさ」
あははははっと水見さんは笑う。
(((この、ダメダメ作者め……)))
この時私たちは気持ちが一致した時だろう。
「いや、なんか色んな作品を書いてたら、楽しくなっちゃってさ。で、でも、少しは進んだよ?11月には二作品出したし……。許して、ね?」
水見さんは手を合わせて、若葉に許してもらおうとする。
「いや、全然それでも進んでないだろ‼︎」
新年早々、若葉の怒りの雷を二発くらう、水見さんであった。
「そういえば、水見さんのこの話を作った経緯を私は知りたいな」
私は一番聞きたかったことを聞く。
私を主人公にしても面白くならない気がするからだ。
「あ、経緯?まずね、この話って二年前に作った話だったんだよね」
「へ〜。思ってたより前から」
夕美先輩はいつの間にかみかんを食べながら、感心したように言った。
夕美先輩、いつの間にみかんを……。
反対に若葉はお餅を食べている。
若葉もなぜお餅を……。
「あ、春も何か食べる?この空間なんでも出せるよ。本編じゃないからね。緑茶も出せるし、ゲームも出せるから」
水見さんは笑顔でそう言う。
「作者に都合のいい、空間だなここは」
夕美先輩も同感らしく、うんうんと頷いている。
まぁ、若葉と夕美先輩はその恩恵を受けているのだけれど。
私はお雑煮を水見さんからもらった。
「で、話しの続き話していい?」
水見さんがそう聞いてきた。
「え?……あ、はい」
お雑煮を食べるのに夢中で忘れてた私はそう返した。
「でね、この話はもともとは『Vtuberの話』じゃなかったんだ。もともとは顔を出していない歌手って設定だったんだよね」
「へ〜。……え、私Vtuberじゃなかったの?もともと」
「うん、そうだね。で、Vtuberにした経緯だけど、顔を出さない理由が思いつかなかったからだよ。色々と考えたんだけど思いつかなくてね」
水見さんは思い返しているからなのか、遠い目をしている。
「あ、でもいじめられてた設定は同じなんだよね」
「へ〜。そういえば、噂で聞いたんですけどこの話を作る前にこの原点ぽい話があったらしいんですけど、それはどういうことなんですか?」
「え……?」
水見さんは覚えてなかったらしく、う〜んと悩んでいたが、
「あ、あの話?」
すぐ思い出したらしい。
「あの話は主人公が男の子っぽい、女の子が主人公だった話だね。違うところは年齢が中学生一年生ぐらいにしてたことかな?よく知ってるね、結構前の話なのに」
へ〜。昔か何年ぐらいだろう。
「ちなみにどのぐらい昔なんですか?」
私は好奇心で聞いてみる。
「え?三年前」
え?三年前……。
「……結構最近じゃないんですか?」
「え?そうなの⁇」
「そうですよ‼︎」
私は本当に水見さんがバカだと宣言したくなる。
「あ、バカだと思ってるだろ!失礼なやつめ‼︎」
「じゃあ、なんで三年前のこと覚えていないんですか!」
「う、それは……」
この後はもう私と水見さんの喧嘩。夕美先輩と若葉はまだみかんとお餅をもぐもぐと頬張っていた。
——この配信は終了しました。
◇◇◇
「と、いうことで少ししか裏話話してないね。いつもより、文字は多いのに……」
夕美先輩はそんなことを言う。
「あ、知ってますか?匿名で聞いたんですけど、夕美先輩の名前を水見さんは物凄い間違えてたり、若葉は後から付け足したキャラらしいですよ」
「「え⁉︎」」
二人はとても驚く。
「あの作者は色々とフラフラしながら小説書いてるな。行き当たりばったりに」
「本当に完結するのかな?」
「いや、ラストまではちゃんと考えているらしい。まぁ、そこまで到着するかが謎だな」
私と若葉はそんなことを話し込んでる。
夕美先輩は名前を間違えられたことに怒ってる。
「新年早々、小説を書くと思ったら裏話とは思わなかったけれど、今年も頑張ろうね(こっちでは秋だけど)」
「そうだな(こっちでは秋だけどな)」
(春っちと若っち、秋なのに何言ってるんだろう?)
全員思ってはいけないことを思っていた。
「そういえば、また新しい小説を出したらしいよ。一月に」
「……またか」
若葉は呆れている。
「その小説は私たちよりすぐ終わりそうな気がするんだって」
「は⁉︎」
「まぁ、そうなんだろうね。作者の好きなものばっかり詰め込んでるし。『ゲームスタート』とかそうでしょ。設定とか違うけど」
夕美先輩はみかん三個目の皮を剥きながら言う。
「そうですよね。でも、伸び具合は私たちが伸びていますよね。何もかも」
「だな」
若葉もそう思っているらしい。
「では、今日はここまでらしいですが、読んでくれた読者の方々ありがとうございました。書いてくれることを願い、またどこかで会いましょう」
「安心しろ。俺が絶対書かせてやる」
若葉は凶悪な感じがした。
そして作者は悪寒がしたらしい。
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