終話
「あ~んむ……肉うま。」
「焼き目が香ばしいね」
「よく食えるなアレの後で……」
依頼の結果を報告して報酬を受け取った私たちはその足で網焼きの屋台に立ち寄った。
直火に炙られた肉にかぶりつく私とセナを横目にデヴィンが呆れたように言った。
「特にルルカさん。さっきまでネズミの血にまみれてただろうに」
「いつものことだから。」
「血や肉を切った感触とか、ギルドで依頼受けてたら気にしてらんないしね。」
「そうかよ……」
続けた言葉に私がすぐに、セナがケラケラと返したことで、少年は諦めたように自分の串焼きにかぶりついた。
「そういえばデヴィン」
ふと思い出したからデヴィンに尋ねてみる。
「昨日言ってた目標達成してんじゃない?今回魔族退治できたわけだけど。」
「……?」
「いや、達成してはないでしょ」
かぶりついた姿勢のまま首を傾げる少年と代わるように、剣士が入って来た。
「『錬金術で魔族殺すこと』じゃなくて『教区に認めさせること』が目的なんだから」
「そうだっけ。」
「そうだな、その通りだ。」
デヴィンがフォークを肉に豪快に突き刺し相槌を打つ。
「だから足りない。アイツらの鼻を明かすにはまだ。
俺はもっと強くなって、もっと有名になって、アイツらに認めさせる。」
「いいね、ハングリーだ。」
その言葉を聞いた串を空にしたセナが笑った。
「んじゃあ景気づけに……
もう一店行きますか!」
「オイ、まだ食うのかよ!」
「あ、次は魚食べたい」
勢いづいたセナに肩を組まれて歩き出す。それに抗議する少年をよそにリクエスト。
「港の方に行ってみようよ」
「いいね!」
セナはそんなリクエストに両手の親指を空に向けて応える。
「知り合いに美味しい焼き魚の店がある!そこにレッツらゴー!」
「ちょっ、まっ」
やたらテンションの高いセナにデヴィンが答える。
「話を聞けぇ!」
名声を得る。強さを得る。
それも私たち“便利屋ギルド”のメンバーの目的だろう。
けど、私にはそんな目的はない。
依頼を解決して、お金をもらって、美味しいご飯を食べる。
それを人間の世界で出来るなら、私はそれでいい。
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