ペテン師
馬場叶羽
ペテン師
行ってきますと言うたび春の水ゆるぶ
春月の光飲みごろかと思う
蝶々や列車行ったり来たりする
ロバの首振る春光の行きどまり
手探りの明かりに出目金の綺麗
こちら見ている金魚はあのあたり
五月闇セロ弾き痩せてセロの肥ゆ
ペテン師とスケッチブック夏の雨
山繭や貌は耳より省かれる
目も鼻もなくて美し山の繭
がまがえる膨れるものは影を生む
万緑のこぼしたものが落ちてくる
八月の駅の毛虫が先をゆく
蟷螂や人体このように曲がる
地球の隙間に秋草を詰めてやる
金星を秋の扇で隠したる
風上に寺のあるらし竹の春
生きていて竹の花など浴びている
血管にはじまりのなく秋の海
座して石の一つも動かずに夜長
ペテン師 馬場叶羽 @kanau_haiku
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