『Dystopia 25』 ~楽園~
白銀比(シルヴァ・レイシオン)
PhaseⅠ
The Three Chosen part Ⅰ
「神は仰られた。この世は破滅へと向かっている」「神は仰られた。導きし者が必要となると」「神は・・・・・・」
ブツブツと、チャーリーはずっと跪きながら両手を組み、頭を垂れ下げ祈っている。
「我はお告げを聞いた!神が舞い降り、我に囁くのだ!世の修正に尽力し堕落した人類の選別が必要なのだと!!」
シェーファーは天を仰ぎ、泣きながら叫び続けている。
「疑ってはいけない。欺いてはいけない。驕ってはいけない。嫉んではいけない。蔑んではいけない。卑しんでは・・・・・・」
ベッドの上で胡坐あぐらをかいて、両手を股間に埋めながら前後にゆらゆらと揺れ虚ろな眼差しでジムは呟き続けていた。
白衣を着た男性が二名、看護師の女性が一名、大きなマジックミラーの裏手で被験者である三名の男性を観察している。
チャーリー、シェーファー、ジムの三人は各々のベッド周辺に自分のテリトリーを主張しているかのように机や椅子、ベッドの配置や聖書などの本を使ってパーソナルスペースを確保していて、決してお互いに馴染むことは出来ないでいた。
「ロキッチ医師、本当に大丈夫なのでしょうか・・・・・・」
「大丈夫だ、フィリップ君。まぁ見ていたまえ。聖母を主張していた女性のケースを君も聞いただろう」
「・・・はい、でもあれはお互いに顔を合わせていない状況での、所詮、記事投稿ではないですか。こうやって直接の接触は危険ではないですか?」
「ああいった手法では時間が掛かりすぎてしまう。効果と結論は『聖母投稿』の前例がすでに証明しているのだから、後は効率的でより効果的な方法の模索をするだけでいいんだよ。この三名の同室は、その第一歩だ」
新任助手のフィリップは目前のマジックミラーの向こうに、各々独自の祈祷をしている被験者三名の状況をメモ書きしながら、ロキッチ医師に自身の不安を投げかけていた。
「今後、どのような方法を取られるのですか?」
「先ずはそれぞれの認識をこちらから誘発し、定期的な個人面談にて他二名について聞いて行こうと思う。その際にある程度の印象操作をして意識を自分自身や幻覚的な存在から、同居しているどちらかの『自称GOD』もしくは『自称・預言者』『自称・救世主』の人物もその見えている神様と同様程度に考え、意識をせざるを得ないようにする必要がある」
「なるほど・・・・・・」
看護師は淡々と医療品の整理作業を終わらせて、その場から何も言わずに去っていった。
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