ある暮らし
齊藤巻繊
ある暮らし
角ばつて透いてきのふの雪達磨
ドアノブは背中合はせに春を待つ
あらそへど卓にミモザのある暮らし
どうせ別れ話に帰着する朧
剪定のもう誰のためでもない庭
見てをれば椿あられもなく落つる
百合挿して百合の角度に定まりぬ
時の日や雲は前世をかんがへる
あぢさゐはほんたうの眼をかくしをる
放しても少しとどまる螢かな
どの部屋のどのカレンダーも七月
冷蔵庫開けばひかりほかになし
打水を踏みゆくタイヤまたタイヤ
電柱に中身八月十五日
来世には今世思はむ薄紅葉
椅子売り場の椅子に座つてゐる子規忌
眠るには流星あまりにも多し
木犀の方角にある新居かな
荷造りや向きさまざまに狂ひ咲く
ろんろんと戸を引いてゐる三日かな
ある暮らし 齊藤巻繊 @kensen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます