第206話

「すまない。ちょっと体調を崩した者がいてな、引き戻してくれないか?」

船に戻った僕たちの代表としてレクスが船の操縦をしている人に話しかけた。

「それは大変ですね。すぐに引き返しましょう」

レクスの言葉を簡単に信じ船は早速引き換えし始めた。

レクスのやつこのためにノインを彼女の元に行かせたな。

「嘘をついて良かったのか?」

「何だ?嘘などついてないぞ」

「どこに病人がいるんだよ!?」

「どこにもいないな」

「じゃあ、嘘じゃねえか」

こいつ嘘じゃないと言い張れば嘘にならないとでも思っているのか。

「恋は心の病とも言うだろう?」

・・・・・・ノインのことを言っているんだろうけど結局は嘘じゃない?

体調が悪いとはまた違うと思うのだが・・・・・・

「納得してなさそうだな」

「普通納得しないだろ」

「まあ、こちらが嘘じゃないと思っていればバレることはないだろう」

バレなければって言っている時点で嘘だと認識している気がする。

まあ、悪いことをするために嘘をついている訳じゃないから良いか。

「説明も終わったところでカイ、王城に送ってくれ」

「いや、もう自分で使えるようになったんだし自分で行けば良いだろ?」

「そうしたらローゼに会いに行くのを忘れたときが更に怖くなるだろ?」

・・・・・・こいつ賢いな。僕が忙しいことを理由に忘れていたのを誤魔化すつもりだな。

「じゃあ、ローゼさんに報告しないとな」

「待て、カイ、待ってくれ」

「そうですよ」

そこで思わぬ乱入者が入ってきた。

マイである。マイに止める理由なんてないよなと思いつつ一度止まって確認しようとする。

「それは早く報告しないといけませんよ」

どうやらこちらの味方だったようだ。

タイミング的にレクスの味方をしそうだったからかレクスは希望を失ったような目をしている。

味方だと思った分裏切られたダメージが大きかったんだろうな。

「じゃあ、善は急げだ。早く行こう」

「あ、私も行く」

マイもついてくるようだ。ローゼさんと久しぶりに話したいのかな。

「自分でちゃんと来いよ。話しとくから」

レクスにそう釘を刺して移動魔法を使った。

なお、マイは移動魔法を使えるが、僕が一緒に行くため僕の魔法で行くことにした。

レクスを連れていかなかったのはちゃんと移動魔法が使えるようになった証明を彼自身にしてもらうためだ。

ローゼさんはレクスが移動魔法を使えるようになったことを知ったら喜ぶだろうな。

そんなことを思っていると王城のレクスの部屋に着いた。

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