第192話
それはノインがある休みに町に出歩いた時のこと。
周りからヒソヒソと自分のことを噂されるのに嫌気がさして宿に帰ってきたときのことだった。
「もしかして、ミリアが連れてきた人間さん?」
振り替えると恐らく獣人の女性が何か荷物を持ってこちらを向いていた。
突然声をかけられたノインはビックリとしたが先程自分を噂していた獣人達とは違いその獣人からは悪意に近いものを全く感じなかった。
それにミリアの名前が出たことからミリアの知り合いということは用意に想像できた。
「はい」
彼が敬語になった理由。それは女性に対する耐性がないためである。
彼は根っからの明るい性格ではあるものの女性との関わりが少なかった。
男友達が多くその友達と一緒にいたため女性との関わりがなかったというのもあるだろう。
「そう、ミリアのことだから何か迷惑をかけてると思います。本当にごめんなさい」
迷惑をかけられたという点を否定しようとしたノインだったが、早朝に部屋の外から大声で起こされたのを思いだし苦笑する。
「そんな謝られることじゃないですよ」
違和感しかないがノインから発せられた言葉である。
「もし、よければうちに来ませんか?迷惑をかけているお詫びをしたいのですが・・・・・・」
その申し出は正直断りたかった。
最近知らない女性との関わりが少なかったから忘れていたが、女性と関わるのは苦手なのだ。
しかし、だからこそどう断って良いかわからなかった。
結果として家にお邪魔することになる。
◆
宿を出て名も知らぬ獣人についていく。
字面を見ればまるで誘拐されているようだが、彼女はミリアの知人ということで大丈夫だろう。
それに、ノインにはもしこれが誘拐であったとしても逃げられる力がある。
もっとも彼の頭はそこまで回ってなかったようだが。
というのも彼の頭の中にはその女性の荷物を代わりに持つべきかどうかをずっと思案していたのだ。
結局それは出来ず家に着いた。
着いた家には数台の馬車がおいてある。ミリアを見てきたためそれが馬人族が引く馬車であることはわかった。
「どうぞお入りください」
「お邪魔します」
ノインが緊張しながら入るとそこには二つのベッドに挟まれた机しかなかった。
文字通りであるが、生活感がないわけではない。しかし、あまりにも簡素な作りだった。
「椅子もなくてごめんなさい。右のベッドにどうぞ」
「・・・・・・失礼します」
女性の部屋のベッドに座るということにさらに緊張しながらベッドに腰を掛けた。
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