第175話
ディルダーが祠に近づいていくと祠の周りをずっと回っている影が見え始めた。
「死神様に仇なす者は容赦しない」
「師匠に歯向かうにはまだ足りないんじゃないか?」
明らかに正気ではないのはわかりつつあえてそう話す。
その答えは攻撃として返された。
その反応を予測していたのだろう。ディルダーは余裕をもって避ける。
武器はどちらも槍。型も似ていることから師弟であることがわかる。
今のところどちらも互角のように見える。
◆
少し経った頃。
「強くなったな。こりゃあ、本気だしても良いか」
その言葉と共にディルダーの上半身が鮫の形に近づく。
これは代々獣人に伝わる秘術。体を獣の姿に近づけ戦闘力を上げるというもの。
しかし、並大抵のものが使うと動く前に力尽きてしまう。
そのため選ばれた者の技と言われる。
実際は鍛練すれば誰でも出来る技なのだが、その鍛練がすごく厳しいのだ。
魔化とは違い自我を失わず戦闘力を上げることが出来る。
種によって効果は異なるが鮫人族のディルダーの効果は攻撃力の大幅上昇である。
サテュロスが獣人の力がほとんど使えないといった理由がこれにあり、水中で陸に住まう動物に近づくことはプラスにはならない。なんならマイナスになるくらいだ。
◆
そこからは互角からはほど遠い戦いとなった。結果としてディルダーの圧勝。
圧倒的な力の差により打ち合いにすらならない。
「あ~、やり過ぎちまったか。まあ、連れ帰るか」
ディルダーのその呟きは優しさがにじみ出ていた。
◆
それぞれの戦いが終わり海底で一番豪華な建物に集合した。
距離の差もあったはずだがほとんど同じタイミングだった。
それぞれが戦った相手を連れ帰っている。
「皆、よくやってくれた。これでオズジが全員元に戻るだろう。これで海底での仕事は終わりだ。地上に戻ってもらって構わない」
「良いんですか?まだ・・・・・・」
『死神様バンザーイ、死神様バンザーイ』
「ああ、オズジがいれば何とかなる。それにいざとなれば俺自身が出ることもサテュロスを呼ぶことも出来るからな。ここからはもう俺たちだけで大丈夫だ。やはり、人間では海底での生活は快適ではないだろう」
「まあ、確かに」
ここで本音を言ったのはノインである。
「そうだろう、そうだろう。ということで地上に帰ってゆっくり休むと良い。というわけでサテュロス、頼むぞ」
「弟弟子使いが荒いね、まったく」
そう言いながらもちょっと嬉しそうなサテュロス。精霊王の姿の時はこの口調なのだろう。
こうしてどれ程海底にいたのか分からないが地上に帰ることになった。
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