第164話精霊王と海底の主

カイ達が部屋を出た後、

「それで、気に入ってくれたかな?」

「それを判断するにはまだ早い」

「その割には僕の秘密をあっさり教えていたようだけど?」

精霊王は少し根に持っていたのかそう言うが、

「あ~、はいはい、悪かったよ」

ディルダーにはあまり効いてないようだ。

「それにしても何で隠してたんだ?獣人なら分かるが人間には隠す必要が無いだろ?」

「まあ、そうなんだけどさ。試練の内容が内容だったからね。敵対関係になってしまったとき精霊ならば隠れることが出来る」

「なるほど、嫌われ役は精霊王に押しつけて獣人の王としてはその関係を取り持つって算段か」

「まあ、その必要は無かったみたいだけどね」

「ようやく実感が湧いてきたぜ。精霊と獣人の混血のお前がどちらともの王になってるってことに」

「まあ、まだ20年だしね」

「そうか、20年経ったのか。ここには昼も夜もないから感覚が狂うんだよな」

「そうだね。出来れば早いところ地上に戻りたいね」

「俺らと違って水中にいる利点が無いからな」

魚人はもちろんえら呼吸も出来るため水中の方が生活しやすい。

わざわざ海底に住んでいるのは人型のため地面があると都合が良かった為である。

精霊は魔法により水中でも呼吸をすることが出来る。

そのため不便というわけではないが長い間日光に当たらない場所にいるのは気が滅入るのだ。

「それにしても兄弟子としてなさけないとは思わないの?担当するのが一人って」

「言っただろう、海底一番の実力者集団だと。その指導をしたのは誰だと思う?」

「そりゃ、兄弟子でしょ」

「その通り。つまり相手の手の内も知っているがこちらの手の内も知られている。集団と対戦するときにそれは想像以上に厄介だ」

「ふ~ん」

「お前こそ担当一人だろ」

「僕だって水中に来たら精霊の力しか使えないからね。獣人の技はほとんど使えないね。海中だし」

「先代に天才と呼ばれていた弟弟子もその程度か」

天才と言われたのは精霊と獣人のハーフという前例のない種族だったが若くして訓練をこなしていたため天才と呼ばれていたのだ。

「それを言うなら兄弟子だって異常と言われてた癖に」

地上に住んでいる獣人が水中ではあまり力を発揮できないように魚人も陸ではあまり力を発揮できない。

それがありつつも彼らの師匠である先代の王の訓練についてこれていたため異常と言われたのだ。

そうして二人で笑い合った。二人が先代の王に師事をしていた時期は一瞬たりとも重なっていない。

それでもここまで気が合うのは同じ人に師事していたという親近感があるのかもしれない。

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