第146話カイとマイ
目が覚めるとそこには衝撃的な光景があった。
返り血まみれの精霊王とその前に倒れているマイの姿。
その様子はどう見ても精霊王がマイを殺したようにしか見えなかった。
色々な感情が溢れていき、やがて怒りに身を任せ精霊王に襲いかかった。
◆
その様子をマイは見ていた。
言うまでもなくカイが見ているのは現実ではない。
明らかに普段と違うカイの様子に
「やめて・・・」
と小さな声で言うことしか出来ない。
「あ~、やっぱりこうなっちゃったか。彼の目をよく見てみるんだ」
精霊王がマイの後ろから声をかける。
マイはその指示に従う。すると、
「片目は死神の目・・・・・・もう片方は?」
「そう、彼の死神の目の奥には他の目が隠されている。あれは野生の目、思考の過激化や身体能力の向上という力がある。元々は死神の目を抑えるためのものだったけど死神の目が制御され始めちゃったもんだから効果が発現し始めたんだよ。最近は死神の目として時々発動してたはずだよ」
その精霊王の説明を聞きながらマイはカイの様子を見ていた。
戦い方はいつもと違い素手による攻撃や蹴りなどしかしていない。
まるで野生の知性が低い魔獣のようだ。しかし、力はとてつもなく何度か精霊王を貫く攻撃がある。
「大丈夫なんですか?」
「ああ、あれは彼に見せている幻覚みたいなものだから痛くも痒くもないよ。でも怪しまれないように現実と同じ強度に設定してるから現実であれをやられたら僕はすぐにやられるだろうね」
「・・・・・・・・・」
「もしかしてこんな彼の姿を見て冷めちゃったかい」
「私を彼のもとに行かせてください」
「うーん、まあ良いけど今行っても君を君だと理解できないと思うよ。たぶん攻撃もうける。ここで死ぬ事はないけど痛みは感じるよ?」
「行かせてください」
「本当は彼自信で抑えた方が良いんだけど・・・あの様子では厳しいかな。君の覚悟に免じて行かせてあげよう」
◆
マイがカイの元に着くとそれと同時に彼と戦っていた精霊王が消えた。
彼は周りを見渡しこちらに気づく。しかし、私だとは気づいてないようで殴りかかってくる。
それを避けずに胸を貫かれるがそれと同時に彼を抱き締める。
ものすごい痛みで意識を失いそうになるのを必死に抑える。
「ア、アア」
彼の動きは止まった。しかし、元に戻った気配はない。
「カイ君、私はここにいるよ」
「ア、アア、アアアアアアアアアアアアアア」
相変わらずものに戻った気配はないものの彼の目からは涙が溢れてきていた。
マイはもう彼が動かない事を察し泣いている彼の顔をこちらに向けキスをした。
その時彼の目は見開かれ、それと同時に目が元に戻る。
「あれ?マイ?」
その言葉で彼が元に戻ったことを確信する。
彼は元に戻った途端今まで流していた涙よりも勢いよく泣き始めた。
それをなだめていると、
「すごいね。本当に戻しちゃったよ。やっぱりその力は君にふさわしいのかもしれない」
「えっと、力って?」
「あ、ええと、それは・・・秘密ということで」
何なのか聞き出したいところだったが泣いている彼の隣ですることは出来なかった。
「コホン。彼の力については説明した通りだから君から教えてあげると良いよ。それと近くに扉を作っておくから彼が泣き止んだらその扉をくぐると良い。元の場所に戻れるから」
そう言うと精霊王は去っていった。
◆
少し経って、
「ぼ、僕は、グスッ・・・・・・マイが・・・殺されたと・・・っ・・・思って」
「うん、あんなに怒ってくれてありがとう」
泣いているカイを優しくマイがなだめ、落ち着いてきたカイとともに扉をくぐるのだった。
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