第132話決定

そんなわけで二日後。

六人で行くことが決定し、帰ってくるのは3学期以内ということが伝えられた。

期間は正確には決まっていないそうだ。

まあ、決まってたら初めの時点で言うだろうから察してはいたけれど。

精霊王に会うというのが今回の一番の目標となる。

出発は5日後ということでそれまでの期間は準備ということで公欠扱いとなり急な休みができた。

正直インベントリを使えるため改めて準備する必要はない。

そのため家に帰ると5日間という時間をどうするのかという話になった。

家にずっといるという手もある。

しかし、前世はインドア派だった僕でもテレビやゲームというものがなくては暇になってしまうのだ。

旅行という手もあるが先日行ってきたばかりなので違う気がする。

そんな風に考えていくと中々案が定まらない。

「じゃあ、私に・・・する?」

めっちゃ恥ずかしそうにそう言われた。

ご飯、お風呂を飛ばして選択肢一個!?

かわいすぎだろ。

「なんか無理してない?」

「だってあんなラブラブなのを見せられたら羨ましくなるじゃん」

確かに。

始業式の日から二日間、正式に恋人になったリーセスとレイのラブラブぶりはすぐに学校の話題になるほどだった。

一部ではそろそろベストカップルランキングの一位になるんじゃないかと噂されていた。


結局家で過ごす事になりました。

暇と言ったのは撤回しよう。マイがいるなら。



その頃レクスはローゼに捕まっていた。

もちろん亜人の聖地へ向かう事についてだ。

父親である国王には確かに亜人の聖地へ行くように言われた。

しかし、それをローゼに隠しており今日ばれたのだ。

少し訂正すると行くことが確定したため先回しにしていたことをしなければならなくなったのだ。

ただレクスも手を考えていなかったわけではない。

それは最大の切り札にして唯一の切り札。


「・・・・・・やっぱり私もついていくわ」

「落ち着け。カイの魔法でいつでも帰ってこれる」

レクスの切り札とはこれだ。つまりカイを専属のタクシーとして使おうというわけである。

「カイさんにそのことは?」

「後で言うつもりだ」

「明日、言いに行くわよ」

「はい」

賛同するしかないレクスであった。



急に5日間の休みを得たノインにはある作戦を実行しようとしていた。

それはリーセスとレイをイワルナという町に旅行に行かせること。

つい先日作戦を成功したばかりだが新たな作戦を始動させていた。

それは二人の関係をより確実なものにすること。

もう既にひとつ行動を起こしている。

それは両親に亜人の聖地に行くことを伝える手紙にレイとリーセスが付き合い始めたということも書いておいた。

外堀を埋める作戦だ。

そして今回イワルナの町に旅行に行ってもらうのは冬休みの最終日、カイが色々と聞かれている時にあることを聞いたのだ。

なんでも受付の人がやり手の恋のキューピットらしい。

詳しい話までは聞けなかったが丁度その頃リーセスとレイは馴れ初めを聞かれそれどころではなかったため聞いてなかったはずだ。

このチャンスを流すわけにはいけないとノインは二人に旅行を提案するのだった。



ノインにより旅行の提案を受けた二人。

二人きりで行くように言われたのだがさすがにノインを置いていくことはできないと三人で行くことにした。

そのはずだったのだが、朝起きるとテーブルに紙切れがひとつ置いてあった。


用事を思い出したから二人で行ってこい                     


そう書いてあった。

さすがに嘘なのはわかったが肝心のノインがどこにもいないためどうすることもできず二人で旅行に行くのだった。


ちなみにノインはというとリゼイル達が泊まっている宿にかくまって貰ったそうだ。



リゼイル達はリーセスを探し出すという目的がなくなったためこの王都で冒険者活動をすることにした。

冒険者は職業柄どこの町でも仕事ができるが渡り歩きながら冒険者をする人は少ない。

それは何故かというと行きつけのギルドがあるとそこでおすすめの依頼を紹介されることがあったり、手続きが素早かったりなど効率が上がるからだ。

だからこそ遠くの町の依頼も行きつけのギルドで依頼を受けて行く人が多いのだ。


それともうひとつここで冒険者活動をしようとする理由がある。

それは最近まで唯一のSランク冒険者だったロヴァイ卜に会える可能性があるからだ。

長年冒険者をやっているからこそわかるSランクの壁。

だからこそ一度会ってみたいのだ。


何よりここならばリーセスの結婚式に参加できないということはないだろうという算段だ。

これが本命に近いかもしれない。


三人はまず手始めに住む家を探し始めるのだった。



精霊王の執事であるニゼリアは精霊王に報告していた。

「どうやら彼らは来るようです」

「そうか。ご苦労だったな。だが、何か不満があるようだな?」

「すみません。人間をこの地に入れるのはどうかと」

「僕はね前から言ってるけどそういう種族差別をなくしたいんだよ。まあ、今回の目的は別にあるけど」

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