第130話最終日が近づくなか

翌日となった。

リーセスは昨日と同様緊張が隠しきれていない。

その様子を見てノインは少し安心した。

昨日、外出してしばらくした後これではリーセスが告白したのかわからないということに気づいたのだ。

そのため今日は二人の邪魔にならないように静かに過ごすつもりだ。



リーセスは機会をうかがっていた。

どのタイミングが良いのか、どういう風にすると良いのか、全くわからずにいた。


昼食の時チャンスが訪れた。

ノインがすぐに食べ部屋に戻ったのだ。

突然のチャンスに薄れかけていた緊張が最大にまで跳ね上がる。

その様子をレイが気づかないわけもなく、

「大丈夫?昨日からおかしいよ」

「だ、大丈夫や」

「本当?熱があるんじゃ・・・・・・」

そういいながら自分の前髪を上げ近づいて来るレイ。

「ホンマに大丈夫やって。これは、その・・・・・・緊張してしもうて」

「緊張?なんで?」

「それは・・・その・・・」

やはり言い出せない。

そのとき心配そうな顔でこちらを見ているレイが目に入る。

覚悟を再びして口に出そうとする。

「僕、気づいたんや。初めてレイに会ったとき自分の素が出てたんちゃうかなって。今までそういう経験なかったんや。やからその・・・・・・ずっと気になっとって・・・・・・僕の彼女になってくれまへんか?」

しっかりと言いきった。

その場は静寂に包まれるが二人ともが自分の心音を強く感じていた。

リーセスは静寂の時間が長くなるにつれ緊張が高まっていく。



レイはというと、好きな人からの突然の告白に状況の整理が追い付いていなかった。

初めは他の人よりも会話が少なくて嫌われているもしくは苦手意識を持たれていると思っていた。

それでも諦められなくてとにかく頑張った。

徐々に距離が近づいているという成果は実感していた。

しかし、リーセスは誰とでも親しくなるため自分もその内の一人なのかもしれないと考えていた。

それが急にお付き合いをするチャンスが巡ってきたのだ。

困惑しても無理はない。


頭の中がほぼ真っ白になり、この事以外考えられなくなった時、

「はい」

その言葉と共に涙が溢れてきた。



レイからの返事を受け、嬉しい気持ちを押さえつつ、

「待たせてごめんな」

そう言い背中をさすることがそのときできる限界だった。



そのような流れをノインは自室からこっそりと聞いていた。

ノインとしても長年続けていた作戦の成果がようやく実り、嬉しそうなレイの様子からもらい泣きをしていた。

その声は少し漏れていたのだが、二人にそこまで気にするほどの余裕はなかったため気づかれなかった。

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