第86話出発

翌日。

遂に訪れてしまった出発の日。

僕達、レクス以外のクラブメンバーとロヴァイトさんは同じ馬車で向かうことになった。


1つ気になるのはこんな大人数で乗れる馬車ではなくその馬車に中にあった樽だ。

丁度人1人が入れそうな樽。

少し嫌な予感がしたがその通りだと面倒なことになるので見て見ぬふりをした。

後回しにしただけだったのだが。

皆は樽を怪しく思ってないようだったので嫌な予感は外れているのかもしれない。


説明が少し遅くなったがこの馬車はウェンテライウ王国の東端ステロンド草原に向かっている。

そこが戦場になる予定だ。

今回は帝国からの宣戦布告が無いためこちらに入ってくるまで攻撃が出来ないらしい。


ほぼ確実にこちらに向かってきていたとしてもなので本当に不完全なルールである。

これでは宣戦布告をしなければその国に行くまで安全に進軍出来てしまう。

「カイ君?」

「ん?」

急に呼ばれたのでマイの方を見る。

「あれ?さっき目が死神の目になってた気がしたんだけど」

「え?」

「気のせいだったのかも」

「そう」


マイの見間違いだと良いけど………………

もし知らぬ間に発動していたとすれば……………僕はこの目を使いこなせるのだろうか……


夕方、草原まで行くにはまだ時間がかかるらしく野営をすることになる。


夕食を食べているとこんな声が聞こえてくる。

「食べもんは上手いけど風呂がないのがな~」

「ほんとな」


これ以外にも汗が気持ち悪いとか色々お風呂が無いことへの不満が聞こえてくる。

僕はある目的もあったがお風呂が無いことの気持ち悪さには同情できたので魔法でサクッとお風呂を作った。

ちゃんと男女別で大浴場みたいなのを作ってみた。

「お風呂を作ったので良かったらどうぞ」

声を少し張って呼びかけると、その声は近くの人達にしか届かなかったが人づてにドンドン伝わっていき大行列が出来た。


その内に僕は馬車に戻る。

ある目的とは嫌な予感がする樽を調べること。

まずは上蓋をノックしてみる。

ガサッ、ゴト。

やっぱり………………

明らかに樽の中から音が聞こえた。

「レクス何だろ?もう分かってるから出てこいよ」

上蓋がソロソロとずれていきレクスが顔を出す。

「何故分かった?」

「樽が怪しすぎんだよ!」

僕のやってたゲームでは樽とか壺とかは調べるのが基本何だよ。


「ローゼさんにはちゃんと言ってから来たんだよな?」

「もちろんだ。前にお前達が来たときに怒られていただろう?」

「そういえば確かに」

「まあ、そういうことだ」

こうして僕の予感は当たるのだった。

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