第76話リーセスの過去

翌日。

今日も学校が休みだったため家でのんびりしている。

今の状況でのんびりしているのはおかしいかもしれないが出来ることがないのだ。

いや、指示無しで動くとマズいので動けないという方が正しい。

現地にさえ行けば魔法で大河を作って進軍を遅らせたり台風を起こして進軍を中止させることも出来るはずだ。

規模が大きすぎてやったことがないから出来るとは断言出来ないけど。


僕がもし普通の一般市民だったら勝手にやっても問題ないと思うんだけど、僕は王子の護衛。

相手には僕のとった行動は全て王子の命令だと思われるだろう。

良かれと思ってしたことでもレクスを困らせる結果になるかもしれない。

まあ、これは僕が城の人に言われたことほぼそのままなんだけどね。


そんなわけでのんびりしている。

え?戦争に向けて対策しとけって?

結構前から帝国が攻めてくるかもって言われてたからもう色々対策してるのよ。

もうアイデアが出来ない位には。


夏休みに作った魔法なんてほぼ全て帝国対策の魔法だ。

やっぱり命に関わる事はちゃんとしないといけない。

後で後悔したところで死んでは何も出来ない。

僕みたいに転生出来る事なんて稀だろう。







リーセスは操られているふりをしている。

それを悟られぬように操られていた頃の口調で話している。

(なんや難しいなぁ。ほんまにこれでええんか分からんなるわ)

普段と違う口調で喋る事に苦戦しているようだが彼が今いる帝国軍の人達にはバレていない様子である。

(はぁ、まさか操られとる間に戦争の手引きしとるとはなぁ。これ無事に帰れても大罪人になるんとちゃうか?やってられんわ)

リーセスは今後のことを意外と真面目に考えている。

彼の前世はお察しの通り日本人だ。

前世の彼は100%陽キャで学校では話したことがない人の方が少ない位だった。

何ならクラスメイトは基本的に全員友達、同学年もほぼ友達、他学年にいたっても半分以上が友達であった。


そんな彼はいつの間にか森の中に来ていた。

それも今までの慣れ親しんだ体ではなく5歳くらいの体となって。

その時所持していたものはリーセスと書かれた木の札のみ。

幸いにも服は着ていたが本当にそれのみだった。

名前を思い出そうとしても出てこない。

そこで彼は今までの情報をもとにこう結論づけた。

「これが話題の異世界転生っちゅうやつか」

そもそも体が変わることなどあり得ない。

アニメなんかでは中身が入れ替わっている事もあるが現実では聞いたことがない。

かと言って異世界転生も現実には無いと思っていただろう。

しかし、彼はそれを疑わなかった。

それは彼の視界の隅に見たことのない生物がいたためである。

それは犬に似ているのだが足が異様に長い。

そのため普通の犬ではないことが容易に想像出来た。

その生物は今にもリーセスを襲おうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る