第67話決行

少し経つとマイの寝息が聞こえてきた。

少し後ろ髪を引かれつつマイを起こさないようにリビングに向かう。

瞬間移動をしなかったのは着替えるためだ。

いくらバレたくないとはいえパジャマで外に出るのも外で着替えるのも嫌だ。

必要なものは全てインベントリの中に入っているので準備はいらない。

用意していた置き手紙をリビングの机に置き、瞬間移動で出来るだけ遠くに行こうとしたとき、

「何処に行くの?」

一瞬聞き間違いかと思ったが後ろにはしっかりマイがいた。

「後処理を警備軍の人達に全部任せるのは申し訳ないと思ってさ、手伝ってこようと……」

咄嗟にしては上手に嘘をつけたと思う。

僕自身の手でマイを殺してしまうこと。

それは何としても避けなければならない。

たとえ可能性が少なくても0でないのなら……

「嘘でしょ」

ドキッとした。

こんなあっさり見破られるとは……………

これでダメなら違う理由を……………

「やっぱり嘘だったんだ。何か隠してるでしょ」

「いや、それは……………」

「私にバレて無いと思ったの?カイ君が何か思い詰めている事くらい分かってたよ。レクス様にもしっかり様子を見ておくように言われたし」

あれ?レクスにもバレてる?

「そんなたいしたことじゃないよ」

「たいしたことだから私達に隠してるんでしょ」

「……………」

何も返せなかった。

「……………話して」

「え?」

「どんな内容でも受け入れるから話して」

正直無視して去る事も可能だ。

しかし、僕はマイの真剣な顔にその選択肢を選べなかった。

無視しないにしても言わないという選択肢もある。

僕は話すかどうか考える。

その間マイは何も言わずに待ってくれた。


僕は結局話すことにした。

置き手紙にも書いているのでいずれ知ること。

それを何故話すか迷ったのか。

それは話したときの反応が恐かったからだ。

最悪の場合拒絶される可能性もある。

そんな内容だ。

しかし、それは逃げだ。

僕は今すぐ逃げだしたい気持ちを抑え話す。

「僕は自分の殺意を抑えられなくなっているんだ。今すぐにでも死神の使者という男を殺しに行きたい。そう思っている自分がいる。

それが周りの人達に向いて殺してしまう前にここを離れようと思う」

そこまで話したときマイは静かに近づいてきた。

そしてビンタがとんできた。

それで頭が真っ白になる。

「……………何で?」

「え?」

「何で相談してくれなかったの?」

「それは……………」

「明日、レクス様も交えて話しましょう。

もし、去るとしてもその後です。良いですね?」

「はい」

いつになく怒っている雰囲気のマイには逆らえなかった。

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