第57話気づかぬ間に

家に帰るとマイに話があると言われた。

何かと思い聞くことにすると

「私達いつ結婚するの?」

というのが第一声だった。

「急にどうしたの?何かあった?」

「今のままだとカイ君が誰かにとられるかもって言われて」

「誰に?……………って、ああ理解したわ」

「婚約すればその可能性が減るとも言われて………」

「……………」

凄く反応に困る。

「ごめん。すぐには決められないよね」

そのマイの言葉に僕の恥ずかしさというものが消えた。

「マイ、僕の婚約者になってください」

「……はい」

かろうじてそう返事をしたマイの頬には一筋の涙が流れていた。






数週間経ちいわゆる2学期が始まり少し経った頃。

僕達はあるイベントに向けた準備に取りかかろうとしていた。

あるイベントとは魔法祭。

魔法版の体育大会と文化祭が一緒になったようなものだ。

3日間行い、1日目が魔法版の体育大会。

2日目以降が文化祭となっている。


その魔法祭の競技に誰が出るのか。

また、文化祭で何をするのかをクラスで話し合っている。

しかし、競技に関しては魔方陣研究クラブのメンバーは全員辞退することになった。

というのも森でロウオウ(キングウルフとなっている)を倒した人物が率いるクラブを出したら競技のバランス調整が大変になる。

それを防ぐ為に僕達を辞退させるようにベン先生が頼み込まれたらしく申し訳なさそうにお願いしてきた。

まあこればかりはしょうがないので競技は辞退することになった。

別に前世と種目が一緒ならやりたいともならないんだけど魔法祭の競技は体より魔法を動かす。

やってみたい競技とかたくさんあったんだけどね。

例えば魔法版の徒競走、障害物走、二人三脚もあったな。

一つ一つ説明していくと徒競走は魔法の速さを競うもの。

障害物走は途中に入学試験の時に使っていた防御魔法がかけられた木製の人形があり、それを避けるか貫くかして速くゴールするもの。

二人三脚は魔法の玉を2人が出しその魔法の玉一個分ずつ前に出す。

規定以上にタイミングがずれたり2つの魔法の玉が離れると失格という感じだ。

ごめん。二人三脚ではないかも。

適切な表現が見つからない。

ようは息を合わせる系の競技だ。


他にもグループで魔法を大きくしていく競技やクレー射撃の要領で飛んでくる的に魔法を当てる競技だったり色々あった。

まあ今回は参加出来ないんだけど……………。

うん?これ来年からも出られない可能性あるかも……………。

今は考えないことにしよう。


そんなわけで競技に誰が出るのか話し合っているのを適当に聞いていたのだが、どうやら終わったらしい。

そして文化祭の方で何をするかという話し合いになった。

クラスで何か1つはしないといけないらしい。

話し合いには参加せず決まったものを文句を言われない程度に協力しようとしていたのだが話を振られてしまった。

他の生徒達は王子様がいるため変に意見することが出来ない。

そのうえ、直接王子様に何が良いか聞くことも出来ない。

そんなときにその王子様の護衛がいたので丁度良いと思われたのだろう。

僕はレクスから前情報として劇をする事が多いと聞いていたため劇はどうかと言った。

するとレクスがニヤニヤしながらどんな作品をするのかと聞いてきた。

こいつ僕がこの世界で有名な作品を知らないことを知ってて聞いてきたな。

「すみません。そこまでは考えておりませんでした」

「そうなのか?ではこういうのはどうだ?」

そう言ってレクスが話し始めたのは端的に言えば恋愛もの。

王子様パワーか純粋に良いと思ったのか分からないがほぼ全員がそれをすることに賛成する。

となると次は誰がどの役をするかという話になる。

主役とメインヒロインをやりたがる人はいないだろうと思っていると案の定誰も立候補しない。

しかし、次の瞬間皆の視線が僕の方に向く。

正確に言うと僕とマイに向けられている。

もちろん僕もマイも手を挙げて立候補したわけではない。

この状況になってようやくレクスがなぜ恋愛ものを出してきたかが分かった。

僕達が婚約したことがなぜか学校中で話題になっておりこの学校のカップルの代表って感じになっていたのだ。

そこに恋愛ものの劇の主役とメインヒロインの役を持っていけば自然と僕達がやることになる。

誰も立候補しないのは容易に想像出来るし。

何なら前情報として劇が多いと伝えたのもこうするためか。

もしそうだとするなら恐ろしい。

「決まりみたいだな。カイ、スタール頑張れよ」

はめられた事が非常に悔しいがここは皆の前なので反論の余地はない。

「謹んでお受けいたします」

「……えっと……頑張ります」

僕が引き受けた事でマイも引き受けざる終えなくなっていたがこれはしょうがない事だ。

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