第8話模擬戦
「ソラ、アゴットさんって僕より強いかな?」
小声で聞いてみた。
(さあ、多分勝てるんじゃないか。)
こいつ、他人事みたいに言いやがって。
そういえば、王都に入ってから周りの目もあり、ソラと話して無かったな。
……決して忘れてた訳じゃないよ。うん。
ここで、模擬戦のルールの確認だ。
相手が気絶または降参したら勝ち。
魔法は直接攻撃をしないならあり。
つまり、ありがちな火の魔法で攻撃はダメでも水の魔法で相手を濡らして動きを妨害することなどはありな訳だ。
そんなルールでやるわけだが、アゴットさんは僕と同じ木剣を手にして僕の前で構えている。さすが軍のトップ、隙がない。だが、僕には確信している一つのことがある。
それはソラよりは弱いということ。
決してアゴットさんが弱い訳ではないのだが、僕はソラという格上を知ってしまっているからそれ以上の脅威を感じることが出来ない。
そう思っているとアゴットさんの剣先が微かに動いた。
それを確認した僕は前に飛び出る。
アゴットさんは一瞬目を見開いたき対応するために後ろに下がろうとするのだが、僕が飛び出した時同時に薄い氷の壁をアゴットさんの背後に作っていたのでその壁に突っ込んでしまう。
薄く作っていたのですぐに壊れたのだがアゴットさんの体勢が崩れる。
そこに追いついた僕はアゴットさんの剣が手から離れるように弾く。
アゴットさんの剣は審判の近くまで飛んでいき、その剣とアゴットさんの間に僕が立つ。
「降参だ。まさかこんなあっさり負けてしまうとは…………。私もまだまだですね。」
「いえいえ、あの隙のない構えはさすがの一言ですよ。」
そこで審判が、
「勝負あり!!、勝者カイ=マールス!!」
と言うと周りで見ていた人達が歓声を上げ始め、瞬く間に騒がしくなった。そしてすぐに囲まれた。
すごいなやらなんでそんなに強いんだやらいろいろ言われてるが一斉に言われているので何が何だか分からない。どう反応しようと困っていると、
「落ち着け!!レクス様の前だぞ!落ち着かん者にはこの後私が直々に稽古をつけてやる!」
アゴットさんが助け船を出してくれた。
………ここにもいたよ、ドSで鬼畜なやつ。僕に向けられていないのでとりあえず触れないようにしよう。
触れぬ神にたたり無しって言うからね。
「アゴットさん、ありがとうございます。」
「いえいえ、部下たちが申し訳ない。」
そんなことを話していると、レクスが近いてきた。
「やはり、お前はただ者では無かったな。私の感はやはり正しいようだ。」
あ、負けた方が良かったかも。
レクスに自信付けさせちゃった。
…………まあいいか。
「ところで僕がする仕事って何なんだ?」
「おい、レクス様にため口とは何事だ。」
あ、アゴットさんの前だった。
やっぱりため口はやめた方がいい気がする。
じゃないと人前でボロがでる。今みたいに。
「良い、アゴット。私が認めているのだ。」
「そうでございましたか。取り乱してしまい申し訳ございません。」
「気にするな。それで仕事だったな。
それは、私の護衛だ。」
………………
待てよ、こいつ王子なんだよな。
会って間もない僕を護衛に付けるってどういう事だ?
「ちょっと待て、何で僕なんだ?」
「そうだな、一番の理由は感だ。」
こいつ、感信じ過ぎだろ。
「後は、同じ魔法学校の生徒になる護衛がいなかったのと、強い事位だ。」
先にそっち言えよ。
それはともかく、レクスと僕は同い年だ。
なので魔法学校では同学年になる。
「お前が私の護衛になるなら王家から学校の資金を出す。もちろん、給料から引かれる訳ではない。給料もかなりある。この条件でどうだ?」
好条件を並べてきやがった。
かなり必死だな。
僕には今二つの選択肢がある。一つは断り、冒険者ギルドに入り魔獣を倒しながら生活し溜めたお金で学校に通うこと。
もう一つはこれを受け入れレクスの護衛になることで学校に実質無料で通うこと。
実際どちらでも良いのだが、実質答えられるのは後者のみだ。だって、皆こっち見てるのに王子様の要求を断ったらどうなることか。
「分かりました。護衛を引き受けさせて頂きます。」
「む、だから敬語は辞めろと言っているだろう。だが、よく判断してくれた。これからよろしく頼む。」
「ああ」
こうしてレクスの護衛になることが決まったのである。
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