娯楽極楽ロウブレイカーズ

イフェイオン

第1話

ぜぇ、ぜぇ、ぜぇっ


はぁ、はぁ...くっそ、まずったなあ


目が隠れる長さの前髪と肩まである後ろ髪が几帳面にまっすぐ切られているおかっぱあたまの少年が、整っている青ざめた唇から忙しなく白い息を吐き出しながら逃げるように走っている。


その少年の後ろからは三体のロボットがガチャガチャと音を鳴らしながら少年を追いかけている。


余裕な様子で少年との距離をどんどん縮めていくロボットを視界に映しながら前へと進んでいく少年の進路を断ったのは、少年の身長の二倍はありそうな高い壁...というより板であった。


少年が歯をギリッと鳴らしながら板に背をつけて三体のロボットを睨むと、ロボットたちは変わらない表情のまま、少年ににじりよっていった。


そうして一体のロボットがムチを腰から外し、それを振り上げた後、三体のロボットが見たのは苦しがりもがいている少年...ではなく、高い板の上から飛んでくる三本のオノだった。










「もぉぉ〜!私が帰ってこないあなたに気づいて探しに行ったおかげであなたは今息ができてるのよぉ?ちゃんとわかってるのぉ?ペイン?」


高揚した顔、とろんとした目、、いわゆる、酔っ払った状態である20代前半の女性が、でろでろと少年を叱っている。


「はい、すみませんでした。ブーズさん。」


ペインと呼ばれた少年は女性のことをブーズさんと呼び、うなだれながら、(いつも酔っ払ってるこの人が本当に、さっき冷めた目でロボットの頭を打ち砕いていた人と同一人物なのか?)

と、思っていた。


ブーズの方は延々と喋りながら、ペインの方は延々と考えながら歩いていると、一軒の古びた家に着いた。


ブーズは持っていた鍵でドアを開け、二人はその家の中に入っていく。


そしてクローゼットの戸を開けてその中に入り、ペインが服をよけてゼンマイのようなものを回していくと、クローゼットは二人を乗せてゆっくりと降下していった。



十メートル程度降下すると、クローゼットは動きを止め、二人がクローゼットから降りて薄茶色の床に足が着くと、元の位置へと上がっていった。



二人が降りた地下には、トンネルのような、幅は狭く横に長い空間が続いていた。


ペインとブーズがそれぞれの持ち場に戻ると、二人がここで一緒に住んでいる仲間たちが二人に向かってきた。



ペインが、自分を心配してくれていたんだな、と勝手に解釈し、しみじみとしていると、大勢の若者の中で、保護メガネをつけた白衣の男が、クリアな声でこう叫んだ。





「奴らの、AIたちの出現場所を解明したぞ!

これで奴らも一網打尽さ!」



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