本作の特徴は、まずその繊細な文体だろう。わたあめのように、甘く、ふわふわとしていて。口に含んだらその熱で溶けてしまいそうな。淡く、儚い文体。それと対をなすのがその世界観。これを上手く言語化するのは難しい。ただ間違いなく言えるのは、救いがあるような、ない様な。やっぱり、甘く、切なく、消えてしまいそうな。いつまでもこの世界に浸っていたいと感じさせる様な、ある種幻想的な世界。是非、ご堪能あれ。後悔することはないだろうから。
作者さんの意識が文字の一つ一つに満ちています。ひらがなでの表現が主人公をつくっていて、反対に漢字で表現されている言葉は強調されていて、その判断のすべてが高い精度で繊細に書かれています。難しいテーマ、凝った文章、練られた構成、そんなもの本当は必要ないんですね。高い美意識さえあれば文学は書けるのだと見せつけられました。おすすめです。