えっ強くね…

 僕は目の前の光景が信じられなかった。


 竜の前には猪、いや、現実世界で想像できる猪とはツノの大きさや体の大きさが全然違う何かがいた。


 そんな凶悪なもう魔物と言っていいだろう、そんな猪の突進に対して竜は超反応を見せているのだ。


 何の能力なのかは遠目から見ただけではわからない。


 しかし、あんな動きを何度もすることができていると言うことは僕なんかよりずっと格上の能力だろう。


 しかし、あそこまでの反応が出来るのなら逃げることもできそうなのに。


 何故、竜は逃げられないと言ったのだろう。


 こんな状況でも不思議と頭は冴えていた。


 後から知ったのだが、これは僕のサブ能力「冷静思考」によるものだったという。


 名前は非常にダサいが、どんな時でもそれなりに冷静でいられるというのはのちにかなり役に立ったのである。


 竜の超反応は一瞬一瞬のスピードは速いが、持続性があまりないようだ。


 いや、違う。あれは超反応ではない。


 あれはである瞬間移動だ。


 なぜ竜が使うことが出来るのだろう。それぞれに与えられた能力は違うものだと思っていたのに。


 そう悩んでいる最中にも竜は瞬間移動を使って猪の突進を避け続けている。


 瞬間移動は移動する際、非常に不快な感覚に襲われるはずだが、竜は顔をしかめたりといったことはしていない。


 自分が瞬間移動を使えるが試してみたが、ちゃんと使えたので(もちろんきょうれ強烈な不快感に襲われた)竜の能力が人の能力を奪うといった類のものでもなさそうだ。


 そしてついに竜は自分から猪に向かっていった。


 瞬間移動を先ほどまで使っていたはずの竜は何故か今剣を右手に持っている。いつのまに出したのだろう。というか、その剣を出したのだろう。


 竜はその剣を猪に首に向かって振るい、猪の首を切り落とした。


 うん……………………は?


 どこから突っ込めばいいのだろうか。


 現時点で竜がやったことを並べると


・僕の能力使ってる

・なんかカッコいい剣持ってる

・猪の首を切りとせる


 強くね?


 そんな事を思いながら竜の方を僕は見ていた。彼を質問攻めにする必要があるようだ。


「流石に説明してもらおうか?」


「なんで春樹さんそんな怖い顔してるんですか。」


「知らん、ていうか本当に意味がわからないから説明してくれ、いやほんとに意味わからん。」


「意味が分からないと言われましても…僕もまだ自分の能力が理解できてなくて…」


「わかっている事を言うと、なんか瞬間移動使えました。「それ俺の能力なんだよな。」え?春樹さんの能力なんですか?」


 想像とは違い竜は全然自分の能力について把握できていないようだ。


「ていうか竜、あのかっこいい剣なんだ?めっちゃ欲しいんだが。」


「これですか?」


 そう言って竜が取り出したのは、先程猪の首を切り落とした剣だ。


 うーん、カッコいい。


 欲しいが、所有者から離れると自動的に消えてしまうらしい。


 使えないことが残念だ。


「竜にはもっと聞きたいことはあるんだが。」


「とりあえずこの猪の死体の有効活用の方法を考えるか?」


「能力について聞くのはとりあえず後にしますか…」


 こうして首だけが綺麗に切れた猪(もう一度言うがこれは猪にしてはデカ過ぎるし、なんかツノこんなに長くなかった気もする何かだ)の活用法を一度考えることになった。


 能力についてはもっと竜に聞かなければならない。

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