第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌の部】

小里京子

賽の河原でマカロンを

やめてやるとか言いながらやめてった後輩の背中にも葉脈


横顔の向こうに恋が降っていて熊の眼だけが熱を吸い込む


残雪のくじら解けて側溝に行くときの春は殺戮者


万年筆にみづうみを浸して書く火星に建てる家の設計図


自転車が添い寝していてしばらくは眺めたけれどあなたは道具


花びらになろうとしてる蛞蝓のペンキ塗立てがうつくしい


美しくなくなることがパック詰めされた苺の復讐〈序〉


時間差で書架の陰から出てくれば世界の鍵は閉められている


変身の仕方忘れてヒーローは問いかけにほとんど答えない


僕だったかもしれなくて被害者の落ち方ばかり考えている


とてもじゃないけれどあなたに用はないなんて言えない微笑まれ方


賽の河原でマカロンを積めばこそ母さん僕を見てくれますか


天窓を被える布がなくて拷問みたいに星を拝んでる


雪に埋もれた花時計かちこちと春までを刻んでてきっしょい


神棚に反射している甥っ子の顔まで憎いフェミニズムとは


一輪車倉庫で夜毎ひそひそと孤独ではない声がしている


さくさくら馬鹿みたいって思わない?全員一斉に落ちるのは


水族館のくらげが踊るAKBの大声何とかに合わせて


触れられるのが死ぬ時と判ってりゃハロウィンなんて行かないものな


まだ誰かの命を浴びて白んでる窓にわたしの息が重なる

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌の部】 小里京子 @yourmess

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