神級と悪魔級

久しぶりに国連にある職場へ行くと、顔見知りが来ていた。

「平良じゃん、久しぶり」

ハリウッド俳優ばりのハーフ顔イケメンがニコッと微笑んで俺に手を振ると、後ろにいた女子がキャッと小さな声を上げた。

「相変わらずの女たらしぶりで」

「別に好きで誑し込んでる訳じゃないんだけど」

メイン平良は国連のスキル研究者で、悪魔級と呼ばれる強力だが人命や社会に影響をもたらすスキルが与えられている。

そのスキルの名前もインキュバスというなかなか物騒な感じの名前だったりする。

「俺は羨ましいけどな、女の子にモテモテになるスキルなんだろ?」

「女の子というか、男性が恋愛対象になる人だからゲイの男性も効果を発揮したりするよ」

平良が己の悪魔級スキルの面倒臭いポイントを解説してくる。

曰く、インキュバスは魅了の上位互換と言われており普通の魅了はダンジョン内のモンスターのみにしか効かない。

対してインキュバスはそれにプラスして人間の女性やゲイ男性にも効果を発揮する。その結果恋愛トラブルで周りの人間関係が崩壊したり、セクハラや性暴力などに遭いやすい。

そんなことを懇切丁寧に説明されてしまうとなんか申し訳なくなる。

「まあ死神みたいな分かりやすい悪魔級じゃないですからね」

死神というスキルは簡単にいうと目が合った生物を即死させるスキルで、悪魔級スキルの代表格としてよく語られるものである。

「むしろ俺はリョータさんみたいな神級に憧れますけどね、やっぱチートスキルは違うでしょ?」

神スキルは俗にチートとかチートスキルと呼ばれる。

それは超人的かつ使い勝手が良くて社会に貢献すると判断されるが故の羨望や嫉妬を込めた呼び方と言える。

「当事者からすると悪魔級とそんな変わんないよ」

「やっぱ変わんないのかー」

お互いこういうのはないものねだりなのだろうなぁと笑い合っていた。

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