俺とお前が出会った頃は

久しぶりの休日なので近所の喫茶店で朝飯食いに行こうと思ったら永礼に止められたので、仕方なくパンを焼きコーヒーを淹れている。

「ほい、お前の分」

「これカフェオレじゃん。ブラックでいいんだけど」

「だってお前全然寝てないだろ、これ食ったら寝とけ」

目元にできたクマを見てると目の冴えるブラックなんか飲ませないで朝ごはんの後は寝させてやりたいという俺なりの心遣いである。

「……ありがとうよ」

カフェオレを受け取って一口飲むと微かに緊張がほぐれたような溜め息が漏れる。

「お前と出会ったおかげで俺の安全は保たれてるんだから、お前に気を使うのは当たり前だろ」

俺のスキルが判明してからの数ヶ月で俺は何度となく命の危機に見舞われて来た。

そんな俺を予知という力で危険を回避させてくれたのが永礼ユタカであり、そんな相手を大事にしない理由がない。

「出会った時は俺の予知全然信じてなかった癖に」

「あの頃は命の危機に見舞われ過ぎて人間不信気味になってたの!」

従兄弟が犯罪組織と組んで誘拐しようとしたり、友達に嫉妬から殺されかけたりと人間不信の理由ならいくらでもあったのだ。

国連に連れて来られて信頼出来そうな相手として紹介されても不信感が拭えなかったのは仕方ない。

「でもお前が何度となく危険を予知して警備人員増やしたおかげで俺は今日まで生きてる、だから信頼して良いと思えたし大事にしてる」

「それじゃまるで俺の能力ありきじゃねぇか」

「スキルも含めてお前を大事にしてるんだよ」

パンを食べカフェオレを飲むうちに眠くなってきたらしく、なんとなく口が悪くなってきている。

「それにこんな面倒なスキルがなかったら出会えなかったろ」

俺たちは同じ九州出身で2個違いだが、それ以外の共通点はない。見た目も趣味や性格も全然違う。

たぶん普通に出会ったら仲良くなんてなる事は無かったと思う。

「お前と出会えたことはこのめんどいスキルがもたらした数少ないメリットなんだよ」

ちょっと恥ずかしいけど、相棒になった男への心からの言葉を伝える。

眠そうにあくびをして「なら良かったよ」とつぶやくので、「眠いならもう寝ろ」と照れ隠しに告げていた。

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