バーチャル・ボルテックス

@maraika

プロローグ ゲーム文化の許容

日本、いや世界においてeSportsという競技がある。その人口は世界で1億3000万人とも言われており、その規模は野球のおよそ3倍のものである。


しかしその大人気競技であるはずeSportsが我々の生活に浸透していないのはなぜか、その理由の一つにゲームタイトルの乱立による人口の分散が挙げられる、数多あるゲームタイトルそれぞれにプレイヤーがいる以上一つ一つの競技規模や市場はせまくなる。2030年、その問題の解決を測ったアメリカの超大手企業e-pec社は激動の2020年代を生き抜いた世界数多のゲーム会社を買収、その総力を結集し、自らが運営するゲームを世界標準的なゲームとすることをIOCに認めさせ、世界大会、オリンピックを含むeSportsの公式種目を作り出すことに成功したのである。


しかしここでひとつの疑問が生まれる、何故この会社はそこまでのことを成し得る財力を有していたのだろうか、元々、この企業は2人の若き天才、アレクサンダー・ストーンとベンジャミン・ヘイズによって作り出されたベンチャー企業であった。しかし営業、交渉の天才アレキサンダーはその渉外能力により元手資金を集め「エジソンの生まれ変わり」との呼び声もあるベンジャミンはその卓越した頭脳により特許や実用新案を打ち出した。その名声は世界各地の若き天才達に伝わり、彼らは進んでe-pecに合流した、そして2028年、ベンジャミンを筆頭とした研究チームは脳と電子の世界を繋ぐことに成功した。つまり仮想空間に入り込むことを可能にしたのである。2029年にまた製品化を達成することに成功し、この大発明はアレキサンダーの大々的な演説の中で発表された。この装置は、一見VRゴーグルのようなものであったが、脳と繋ぐ電子回路が内蔵されており、使用者を睡眠状態にする電磁波をながし、次に情報を脳に送ることで夢の中にいるような形で仮想空間に入り込めるものであった。商品名e-pec1(イーペックファースト)、値段は2000ドルでの発表であった。先進国の人間は電磁波における危険性を危惧し最初は購入を控え、最先端技術を好む人間、及び競合他社、リモートワークによる場所の制約を0にするという機能に魅力を感じた企業のみに購入されたが、発売から1年後の2030年、世界標準ゲームの発表とともにその安全性についての発表があった、なんと使用時の事故件数0件、アレキサンダーは言った「スマートフォン使用中の事故より遥かに少ないことは、我々の安全の証明にもなる」安全性が知られたe-pec1は飛ぶように売れた。


日本では2030年時点ではそこまで大量に売られたという訳ではなかった、日本人にとっての極めつけは2032年ブリズベンオリンピックであった。

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